子どもがどんどん「公共の場」に出ていくことが大切

──なるほど。親としてはつい、「考えさせるような作品を見せなければ」とか「どうせなら、勉強や将来につながる体験を」などと思ってしまいそうですが、ぜひ、エンタテインメントや映画の楽しみ方をアドバイスいただけますか?

戸田: アドバイスなんてとてもとても! ただ、私はライブを見ることが大好きなのですが、日本ではスポーツ観戦でもコンサートでも、生身の人間がパフォーマンスしている姿を見る機会が、まだまだ本当に少ないですよね。私自身、子どものころはそうした体験がほとんどありませんでした。
 でも、海外の映画祭を訪れたときに感じたのは、海外の子どもたちは、そうした体験を多くしているなということ。海外では日本ではやらないようなワークショップもさせていただくのですが、子どもたちは「できないこと」を恐れることも恥ずかしがることもなく、積極的に「コミュニケーションをとろう」「関わろう」としてきてくれるし、「みんなでこういうことをやってみよう」という提案もしてくれる。そんなふうに、気後れすることなく、できないことを恥じずに人と接するというのは、とても素敵なことです。でも、それができるようになるためには、たくさんの「公共の場」に出ていくべきだと思うんです。
 体験を共有し、積極的に人と関わる力を育て、感動する力を育てるチャンスになる。そういうライブ感のあるエンタテインメントを、ぜひ楽しんでもらいたいですね。

(文/山田真弓 写真/小宮山裕介)

戸田恵子(とだ・けいこ)
keiko toda 現在まで女優・声優として活躍。愛知県出身、9月12日生まれ。ミュージカルなどで看板女優として活動。また1979年に『機動戦士ガンダム』のマチルダ・アジャン役で本格的に声優としての活動開始。その後、『きかんしゃトーマス』のトーマス、『それいけ!アンパンマン』のアンパンマンなどの声で人気を集める。その他、洋画の吹き替えも数多く手がけている。