習い事の王道であるピアノですが、練習をしなければ上達はしないがために、つい親子間で「練習しなさい!」とのやりとりが発生してしまうのではないでしょうか。親が子どもをせき立て、子どもが反発するあまりに親子の間でぎくしゃくすることがあるかもしれません。親はどのように家庭での練習をとらえればいいかを、前編「ピアノを通して身に付いた 人生で役立つ4つの力」に引き続き作曲家の轟千尋さんに聞きました。

スタートさせてあげたことだけでも誇れること

―― 毎日娘に「ピアノの練習をしたの?」と聞いてしまいます。子どもの自主性に任せるのが一番だと頭では分かっていても、どうしてもやきもきしてしまいます。

 ピアノは正直場所を取るものですし、音が近所迷惑になっていないかを気にしなければならないし、住宅事情としても難しい。「そんな中でも、せっかくピアノを買ったのに」と、子どもが練習をしなかったらイライラしてきてしまう親御さんの気持ちはよく分かります。

 さらに、今の小学生は他の習い事や塾などで忙しいですよね。お母さんがたも働いていて忙しい。そんな環境で、習い事をさせてあげていることだけでもすごいことだと私は思うんです。

 子どもの頃にピアノを習っていて、しばらく離れていても、大人になって再開する人が多くいます。その時、「昔習わせてもらって本当に良かった」と皆思うのだそうです。ですから、習い事としてスタートさせてあげたことだけでも素晴らしいことで、それを誇りに思って頂きたいと声を大にしてお伝えしたいです。一生のうちに1年でも親にやらせてもらったことによって、子育て後や、シニアになってから『またやってみようかな』と思うかもしれない。そんなことと出合わせてあげられたなんて、すてきなことだと思いませんか?

轟さんが作編曲を担当する、600人で奏でる年に1度の大音楽祭「音楽の広場」
轟さんが作編曲を担当する、600人で奏でる年に1度の大音楽祭「音楽の広場」