アドバイザリー組織が素晴らしく機能している

学校訪問を熱烈歓迎してくれる生徒たち。中には、進んで説明をしてくれる生徒もいます
学校訪問を熱烈歓迎してくれる生徒たち。中には、進んで説明をしてくれる生徒もいます

 さて、もう1点、日本と大きく違う点は、国と現場である学校との間に入って、学校の運営や先生の研修、学校へのアドバイスなどを行っている組織がある点です。これも学校やエリアによって違うのですが、自分の住んでいる市では、市内のすべての公立小学校35校をまとめている組織があります。

 オランダの学校は、先生たちが学校を運営しているわけではありません。このアドバイザリー組織が、日本の文部科学省に当たる教育関係を管轄している役所と学校の間に立って予算や教育の方針を各学校に伝えたり、一緒になって考えたりしています。そして、それに則ってそれぞれの学校が、自分たちのやりたい方針を決めていくのです。そして、このいわば半官半民のようなアドバイザリー組織が実によく機能しています。

 例えば、この組織があるおかげで、学校は運営に関しては特に労力を割く必要がありません。時には保護者への対応や、受け入れ生徒の調整なども、こちらの組織が対応します。つまり学校の先生は、自分の勤務時間をほぼ100%、生徒に向けた時間に使えるのです。しかも勤務時間はフルタイムで週40時間。ワークシェアをしている先生が多いので、実際は32時間、24時間なんて人も多いのです。

 さらにオランダの場合、面白いのは公立と私立の差がほとんどなく(どちらも学費は無料)、近い地域で自由に学校を選べる、という点です。また地域内で、ある一定人数を集めれば、誰でも自由に学校を作ることができます。もちろん教育スタイルも自由です。

 ですから同じ公立小学校であっても、教育スタイルは学校によって大きく違います。長男の通う学校は、市内35校の中では唯一の公立のイエナプラン校です。同じ市内には、他に2校のイエナプラン校がありますが、いずれも私立で。公立と私立の違いは、宗教色があるかないか?という違いです(宗教色が特にないのが公立です)。

 先生がほぼ100%の時間を生徒に向けられるオランダの学校。うちの長男は同じ学年の子どもたちに比べると、まだ少し語学面での遅れがあります。前の学校で語学を専門に習ってきて、親の目から見るとかなり話せているように見えるのですが、単語のスペリングが少し弱いようです。こんなことを、細かくテストして把握してくれています。さらに驚くのが、これを把握しているのが学校の先生だけではないこと。なんと、前述のアドバイザリー組織の担当者もしっかりと把握してくれています。

 遅れを取り戻すための教材を教えてくれたり、学校内での支援プログラムを調整してくれたり、補助の先生をアレンジしてくれたり、もちろん親とも頻繁に面談をしてくれるし、ともかく柔軟に、かつ臨機応変にきめ細かな対応をしてくれるのです。これでも、あくまでも公立小学校です。