エコ・アプリで床のバイキン達をやっつけろ!
毎日の掃除機がけが楽しくなり、子ども達も「掃除機をかけたい!」と食いついてくること間違いなし。その上、掃除機がけが環境にやさしくなる! こんな夢のような「ぬりつぶし爽事機」の実現に向けて、三菱電機の若手チームが試作しています。
試作中の「ぬりつぶし爽事機」には2タイプあります。1つは、プロジェクターと掃除機のヘッドに付けたマーカーとを連動し、掃除し終えた場所を「見える化」するシステム。プロジェクターで今から掃除したいスペースを投影し、掃除機をかけ終えた部分がぬりつぶされていくというもの。
きれいになった場所が一目で分かり、かけ終えた面積の比率が表示されるので、100%をマークした瞬間に「やり切った!」という手応えが得られます。
もう1つは、スマホのカメラで掃除機をかけた場所を認識し、AR(Augmented Reality/拡張現実)という最新技術で見える化するアプリ。これには「ぬりつぶしモード」と「バイキン退治モード」があります。「バイキン退治モード」では、スマホで認識した床上にカラフルなバイキンが次々と現れ、それらを掃除機で吸い込みます。バイキンの種類や大きさによって獲得ポイントが変わり、ゲーム感覚で掃除するうちに床もピカピカになるというわけです。
このアプリを開発しているのは、三菱電機の大澤奈々穂さんたち。「家事を楽しくしたいんです。掃除は汚れた状態、つまりマイナスの状態をゼロに戻す作業なのでやりがいが希薄。“掃除したい!”と思えるような楽しい仕掛けを作っちゃおう、と仲間たちと開発を検討してきました」と大澤さんは話します。
当初、チームが目を付けたのは、テレビのショッピング番組でカーペットに大げさにまかれたゴミを掃除機でザーッと吸い込むシーン。「掃除した実感があり爽快感もありますよね。アイデアを出し合う中、吸い終わったところをぬりつぶせたらぬり絵のように面白いという企画がまとまりました」
「義務になると、仕事も家事もモチベーションは上がりにくい場合がありますよね」とほほ笑む大澤さん。ゲーム感覚に着目したもう1つのきっかけは、行動経済学を学ぶ中で知った、フォルクスワーゲン社の「楽しいということは人の行動を変える=『ファン・セオリー(the fun theory)』」という考え方だと言います。「いくつかのアイデアがあり、その中に次のような実証実験があります」
高速道路に設置したカメラで自動的に認識されたスピード違反者には罰金徴収の通知が郵送され、かたや制限速度を守ったドライバーには宝くじが当たるというもの。「いいことをした人に幸運があるこの仕組みで、時速制限を遵守する人が急増したそうです。強制や罰則するより、“楽しい”、うれしいと思えることに、人は自発的にトライしたくなると改めて感じました」(大澤さん)
実はこの「ぬりつぶし爽事機」はエコにもつながります。 「ぬりつぶし爽事機」で床をぬりつぶすように掃除機をかけると、同じ所に何度もかけることが減り、くまなく短時間に掃除が終了します。つまり電気を効率的に使えるようになり、余計なCO2の排出を減らせるというわけです(★Q3の回答)。