世界中のすべての子どもが、心身ともに健康に自分らしく育つための権利を持っています。この子どもの権利の基本は、1989年11月の国連総会で採択された「子どもの権利条約」に定められています。
『こども六法』には、「いじめから子どもを救う」「生きるための世話をする」など、私たち親や周囲の大人が子どもの権利を守るための項目も多く含んでいます。児童虐待やいじめ被害者の自殺などのいたましい事件を繰り返さないため、この本を読むべきは、むしろ大人たちかもしれません。 前編「子どもたちへ 嫌な思いをしたら大人に悩みを伝えて」は子どもへのメッセージでした。後半では子どもの権利を守るために、大人のなすべき行動を聞きます。

パンダ兄妹が受けたネグレクト 「世話をしてもらう権利」

 やせ細ったパンダの兄妹が帰ってこない親を待ちわびる、というイラストで、ネグレクト(育児放棄)が刑法の「保護責任者遺棄」罪に当たることを明示しています。

 生きるための世話を受けるのは子どもが生まれ持つ「権利」だという説明に、ハッとされられます。パンダ兄妹は民法の「親権」の項で、大人たちに「何日も食べていない」と訴え、救い出されました。このように「助けてくれる大人は必ずいる。どうかSOSを発信して」という、虐待被害者へのメッセージがそこかしこに盛り込まれているのです。

刑法の「保護者責任遺棄等」の解説(『こども六法』40ページ)画像提供/弘文堂
刑法の「保護者責任遺棄等」の解説(『こども六法』40ページ)画像提供/弘文堂

 子どもは、親から受けた暴力やネグレクトを「自分が悪いことをしたので、お仕置きを受けている」などと考え、虐待だという自覚を持てないことも多いのです。山崎さんは「自分の受けている行為が虐待だと認識するだけで、事態は変わるかもしれません。実際に小学生が警察に訴え出て、親が逮捕されたケースもあります。命を守るために本を活用してほしい」と話します。児童相談所の全国共通ダイヤル「189」など、相談窓口の情報も記載しています。

 また同書では、学校と教師、保護者らが協力して、いじめの早期発見や予防に当たる義務も説明。山崎さんは「いじめから子どもを救うことも、大人の義務であり、責任です」と強調します。