「法律でダメだからダメ」では不十分 法律がある理由を考えて

 山崎さんは「『こども六法』を、物事を許可したり禁止したりの判断基準に使いたいという保護者の声をしばしば聞きます。しかし、例えば『法律で禁じられているから、人を殴っちゃダメ』とだけ教えても、効果は半減してしまいます」と語ります。

 なぜわざわざ法律で、暴力を禁止しなくてはならないのでしょうか法律は何を守ろうとしているのでしょうか。こうした背景や理由を考え、納得して初めて、子どもたちは「ルールを守ろう」と心から思うようになるのです。

 「法律が作られた理由を考えるようになれば、時代に合わない法律は変えよう、という発想ができるようになり、市民社会のリテラシーも高まります。本書は『ルール』として使うより、考える力を付けさせるツールとして使ってほしい

 また、親が子どもに課すルールの多くは、親子間で取り決めた「契約」に近いとも指摘します。ゲームを買ってあげる代わりに、決められた時間を守って遊ぶ、部屋を与えたら片付ける、などなど。親が子どもを叱るのは、「事前に取り決めた契約を守らない」と感じた時、というわけです。

 「子どもとの関係に『契約』という考え方を持ち込むこと自体は、悪いことではないと思います。ただ、衣食住の提供や教育を受ける権利といった、憲法で定義された人間の権利は、生まれながらに持っているもので、義務の見返りに与えられるものではないのです」