気に入らない相手に石を投げたら、たとえ当たらなくとも「暴行罪」に、「キモイ」「ウザい」など人前での悪口は「侮辱罪」に当たります―

刑法などの法律を、子どもたちに分かりやすく説明した本『こども六法』が話題になっています。作者の山崎聡一郎さんは子どもの頃、いじめの被害、加害両方を経験したことをきっかけに本書を書いたといいます。いじめを受けたら「仕返しを考えるのではなく、大人に助けを求めて」を呼びかける山崎さんに話を聞きました。

「9月1日」に間に合わせる! 身近ないじめ、いたずらが題材

 「こども六法」は山崎さんが慶応大在学中に作った法教育の副教材が原典で、クラウドファンディングを経て今年8月20日に出版。「とにかく、9月1日に間に合わせるよう作業を進めました」と山崎さんは言います。夏休み明け直後、子どもの自殺が増えるこの日よりも前に、1人でも多くの子どもたちの手に取ってもらいたかったからです。

『こども六法』著書の山崎聡一郎さん
『こども六法』著書の山崎聡一郎さん

 内容は総ルビで、かわいらしい動物のイラストが付き、子どもも読みやすいよう配慮されています。法律の具体例として、子どもの身の回りで日常的に起きていそうな、いじめやいたずらを盛り込みました。刑法の「自殺関与及び同意殺人」の項では、スマホを持った動物たちが「こいつムカつく!」「死ねってみんなで送っちゃおうぜ」と話します。「強要」では、ライオンがウサギに「オマエのゲーム貸さないと、テストの点数をバラすぞ」と脅します。子どもたちに「自分の受けているいじめは犯罪だ」と気付いてもらうことが狙いです。被害者向けに、警察や弁護士、行政機関などの相談窓口の情報も掲載し「本気で助けてくれる人が見つかるまで、諦めないで」と呼びかけています。

刑法の「自殺関与及び同意殺人」の解説(『こども六法』36ページ)画像提供/弘文堂
刑法の「自殺関与及び同意殺人」の解説(『こども六法』36ページ)画像提供/弘文堂

 専門家や教育関係者などからは出版当初、「難しすぎる」「理解できるのは中学生以上では」といった意見もあったそうです。しかし、SNSでの感想や書店のイベントを見ると読者には未就学児も多く、5歳くらいの子が読んでいることもあるそうです。

 山崎さんは「当初、主な読者層は10~15歳くらいだろうと考えていました。しかし実際は、予想よりはるかにすそ野が広くて驚きました」と語ります。もちろん、保護者が買って子どもに勧めたり、一緒に読んだりする家庭もあります。子どもがすぐに興味を示さなくても「困った時にいつでも手に取れるように」と購入した保護者も多いそうです。

 「丸暗記するものではなく、気になったときに辞書のように引くものとして使われることを目指していたので、たくさんの保護者が家に置いてくれたのはうれしい。使い方は自由ですが、著者としては一度本をパラパラめくって、何がどこに書いてあるか知っておくと、必要になった時にすぐ該当の条文を見つけられるのでお勧めです」