家事をもっと気軽に、家族みんなで参加するものにしていこうと花王「クイックル」が立ち上げた「#みんなの家事プロジェクト」(詳しくは3ページ)。第2回は、家事スタイルをその時どきで大きく変えてきた、イラストエッセイスト・犬山紙子さんと漫画家・劔樹人さんご夫妻に「家事を、家族みんなのものにする」ために必要なことについてうかがいました。

「軽視」は家事ストレスを生むキーワード

編集部(以下、──) ご夫妻の家事スタイルは「きっちり分担派」ですか、それとも「ゆるっとシェア派」ですか。

犬山紙子さん●イラストエッセイスト。ファッション誌編集者を経て、2011年にブログ本を出版。女友達の恋愛模様を描いたイラストエッセーが話題を呼んだ。20代を難病の母親の介護をしながら過ごす。TV、ラジオ、雑誌、Webなどで活動する傍ら、2014年に結婚、2017年に第1子を出産。児童虐待問題に声を上げるタレントチーム「こどものいのちはこどものもの」を立ち上げ、社会的養護を必要とする子どもたちに支援を届けるプログラム「こどもギフト」メンバーとしても活動中。<br>劔樹人さん●狼の墓場プロ所属。「あらかじめ決められた恋人たちへ」「和田彩花とオムニバス」のベーシスト、漫画家。著書に、「高校生のブルース」(太田出版)「敗者復活のうた。」(双葉社)など。「あの頃。~男子かしまし物語~」(イースト・プレス)は2021年に松坂桃李主演で映画化された。
犬山紙子さん●イラストエッセイスト。ファッション誌編集者を経て、2011年にブログ本を出版。女友達の恋愛模様を描いたイラストエッセーが話題を呼んだ。20代を難病の母親の介護をしながら過ごす。TV、ラジオ、雑誌、Webなどで活動する傍ら、2014年に結婚、2017年に第1子を出産。児童虐待問題に声を上げるタレントチーム「こどものいのちはこどものもの」を立ち上げ、社会的養護を必要とする子どもたちに支援を届けるプログラム「こどもギフト」メンバーとしても活動中。
劔樹人さん●狼の墓場プロ所属。「あらかじめ決められた恋人たちへ」「和田彩花とオムニバス」のベーシスト、漫画家。著書に、「高校生のブルース」(太田出版)「敗者復活のうた。」(双葉社)など。「あの頃。~男子かしまし物語~」(イースト・プレス)は2021年に松坂桃李主演で映画化された。

劔さん(以下、敬称略) もともとは、きっちり分担派だったよね。

犬山さん(以下、敬称略) 子どもが生まれる前は、家事のほとんどを彼が担当していました。当時は彼の仕事量が少なめだったので、私が家賃や生活費を全部出すから、その分家事をやってほしいとお願いしたんです。家事代行の相場を見て計算して。本当にありがたかったです。

――劔さんはその状況に、反発やストレスを感じませんでしたか。

 それはなかったですね。一人暮らしならやらないけど、人と住むなら料理を頑張ってみようかなと、逆にやる気に満ちていました。それから、彼女は家事を軽視していなかったことが大きかった

犬山 「軽視」というのは、ひとつのキーワードだと思うんですね。社会通念として「家事って仕事に比べたら大変じゃないでしょ」と軽んじられがちだし、無償で当たり前という感覚すらある。

でも私は長期間、実家の母の介護や家事を担ってきた経験からケア労働の大変さが骨身にしみたこともあり、家事はしっかりと対価が支払われるべき尊い仕事だと思っています。

それに、家事の比重は女性に偏りがちですが、彼にはジェンダーロールの意識がほとんどなくて、私に対して「女ならそれぐらいやれよ」とか一切言ったことがありません。そこがスタート地点だったので、私としてはすごくラクでした。

 逆に「女だから私がこれをやらなきゃ」とか「料理ができるようになりたい」ということも、まったくなかったよね。

犬山 ジェンダーじゃなくて、向き、不向きだと思うから。「男性だから外で働かなきゃいけない」とかも、変えていけたらいいよね、個人としてお互いを見て、割り振りを話し合いたい。

睡眠時間とゴロゴロタイムを絶えずチェック!

――お子さんが生まれて、家事スタイルを大きく変えられたとか。

犬山 外での仕事も家で原稿を書く仕事も、家事も育児も全部含めて、1日の総量がお互いにトントンになるようにしました。お互いフリーランスなので波もありますし、2人の仕事量が変わったら家事のスタイルも変えていこうと話していて。

妊娠したときに「このままでは家事に育児も加わって彼の負担が大きくなりすぎる。チームとして健全ではない」と思ったので、2人で話し合い、ゆるっとシェアへシフトしたんです。

――1日の総仕事量はどう測っているのでしょうか。

犬山 目分量なんですけど、目安は睡眠時間とゴロゴロしてる時間です。この2つはすごく大事。いつもさりげなく彼のゴロゴロタイムがあるかどうか気にかけたり、何時に寝たのか聞いて睡眠時間を計算します。これらの時間がお互いに同じぐらいなら、総仕事量はトントンかなと。彼は忙しくなると睡眠時間を削ってもやってしまう方なので、そこは私が気をつけなければと思っています。

 睡眠を削ってまでやろうとは思ってなくて、まあ夜やればいいかなと。

犬山 同じことじゃない(笑)。しかも、しんどいとき、私はすぐに「助けて!」と言えるけど、彼は優しすぎるからか「自分さえ我慢すれば」というタイプ。聞かないとSOSを出してくれないので、仕事量はどうか、家事や育児で無理していないかとか、彼の方に負担が偏っていないかこまめにヒアリングします。それで彼が大変なときは私が子どものお迎えに行くとか、2人とも忙しいときはシッターさんの時間を増やすとか、臨機応変にやっていますね。今は、家族のメンタルや体調がいいことを最優先にしています。

 子どもは急に熱を出したりするし、きっちり決めていてもできるものじゃないよね。家族みんなで流動的に考えることが大事だと思う。