気づかい合いで「仲を深める家事シェア」に

――家事シェアで気をつけていることはありますか。

犬山 お互いが、「2人のどちらかに家事の負担が偏りすぎていないか」という目線を持つことですね。「これはこの人がやるべき」ではなく、お互いの体調や仕事の忙しさを見ながら気づかい合えば、夫婦げんかの火種になりがちな家事シェアも、むしろ「仲を深める家事シェア」に近づくのかなと。

ただ、そのときに、相手の方が多く家事をやっていると思っている側、うちの場合は私ですが、不公平になっていないか目を光らせておくことが大事

そのためには、相手が今どれぐらいの仕事や家事を抱えているのか具体的に知ることが必要です。うちではヒアリングもしますが、2人で同じスケジュールアプリを使って、このあたりは忙しそうだけどどうしようかと予定をすり合わせています。そうやって気づかい合って、リスペクトし合えると、相手を思う気持ちがどんどん湧いてくる。それを今、実感しているところです。

 共働きで収入差があると、力の勾配ができやすいですよね。力の強い方が、どれだけ相手のことを考えられるかが大事かなと。弱い方はなかなか言いづらくて、「相手の方が稼いでいるから自分がやらないと」って追い詰められてしまう。

巻き込む秘訣は「可視化」「話し合い」「放棄」

――家事を家族みんなのものにするために、パートナーをどう巻き込んでいけばいいでしょうか。

犬山 家事って仕事の給料のように数字で見えないから、相手にお願いしたいときでもまともに取り合ってもらえないこともあります。「これだけ家事をやってます」ということを可視化しない限り、実態を伝えるのは難しい分野ですよね。相手が家事を軽視しているなと感じたら、家事を可視化するアプリを使ってみるのもいいかもしれません。負担を一目でわかるようにすると、相手も話し合いのテーブルにつきやすいかも。

――そもそも話し合うことが苦手な人も多いようです。

 真面目に話し合うことをおっくうに思う人っていますよね。僕も放っておいたら、話し合ったりしない方だと思う。でも、彼女は「つき合いが長くても察してほしいはダメ。話し合わないとわかり合えない」という考え方で、それに感化されました。今はほとんど苦にならないですね。

犬山 話し合いっていうと、相手に怒られそうで気が重くなったり、時間がかかったりとコストが高い印象がありますよね。でも、長い目で見ると、話し合える関係性でいることで、むちゃくちゃ仲のいい夫婦になれると思う。だから、おいしいコーヒーでも飲みながら、楽しい雰囲気で、小さなことから話し合いを始めてみる。そういうコミュニケーションの成功体験を重ねていけるといいですよ ね。

家事の可視化も話し合いもダメなときは、相手回りの家事をすべて放棄してみるという手段もあります。以前、私が取材した「夫がまったく家事をしない家庭」では、妻が自分の身の回りのこと以外、掃除も洗濯も全部やめたそうです。すると1カ月ぐらいで仕方なく家事を始めた夫は、「ひそかに罪悪感を抱えているより、自分も家事をやる方が何百倍もラクだ」と気づいたんだそう。

実は、妻に家事を押し付けていたことに対して罪悪感を持っていて、それを消せるのならと夫はどんどん家事をやるようになったと聞いて、なるほどなと思いました。