働くパパ世代、なかでも40代男性に特に注目してほしい感染症に「風しん」があります。実は風しんはその世代を中心に流行が起こっているのです。そこで、感染症の専門家である帝京大学大学院公衆衛生学研究科の高橋謙造先生と、40代の働くパパであるファザーリング・ジャパンの勝間直行さんのお二人に、風しんの感染予防対策について話し合っていただきました。感染症対策への意識が高まっている今だからこそ知っておいてほしい情報満載です。ぜひチェックを!

働くパパ世代の多くが、風しんの抗体(免疫)を持っていない!

──働くパパ世代、なかでも40代男性の間で、今、風しんが流行していることを知っていましたか?

勝間 数年前、妻に第3子の妊娠が分かった時に、メディアや啓発ポスターなどを通じて知りました。でも、子どもができたからたまたま目や耳に入ってきただけで、そうでなければあまり気に留めることはなかったと思います。

<b>勝間直行</b>さん<br>3児のパパ。特定非営利活動法人ファザーリング・ジャパンのメンバー。ファザーリング・ジャパンは、「Fathering(父親であることを楽しもう)」の理解・浸透を目的として2006年に設立された特定非営利活動法人(NPO法人)で、300人以上の会員が全国で活動している
勝間直行さん
3児のパパ。特定非営利活動法人ファザーリング・ジャパンのメンバー。ファザーリング・ジャパンは、「Fathering(父親であることを楽しもう)」の理解・浸透を目的として2006年に設立された特定非営利活動法人(NPO法人)で、300人以上の会員が全国で活動している

──高橋先生、40代を中心とした働くパパ世代で風しんが流行してしまう理由について教えてください。

高橋 昭和54年4月1日以前に生まれた男性は、子どもの頃に、公費による風しんワクチンの集団接種の機会がなかったため、抗体(免疫)を持っていない人が多いのです。 

<b>高橋謙造</b>先生<br>帝京大学大学院公主衛生学研究科 教授 小児科医、国際保健学修士、医学博士。離島(鹿児島県徳之島)、都市部(千葉県松戸市)での臨床経験を経て、順天堂大学公衆衛生学教室助手、厚労省国際課専門官等を経験。専門は、国際地域保健、母子保健、感染症対策等。常に現場に関わって問題解決を考える主義。「保育園と職場で風しん感染を防ごう」プロジェクトでは監修を務める
高橋謙造先生
帝京大学大学院公主衛生学研究科 教授 小児科医、国際保健学修士、医学博士。離島(鹿児島県徳之島)、都市部(千葉県松戸市)での臨床経験を経て、順天堂大学公衆衛生学教室助手、厚労省国際課専門官等を経験。専門は、国際地域保健、母子保健、感染症対策等。常に現場に関わって問題解決を考える主義。「保育園と職場で風しん感染を防ごう」プロジェクトでは監修を務める

勝間 まさに僕もその世代です。でも、なぜ僕たち世代にはその機会がなかったのですか。

高橋 当時、風しんの予防接種は、母子感染を防ぐことを目的に、女性にのみ集団接種が行われていました。当時の制度では、男性は接種の対象ではなかったんですね。風しんは、終生免疫と言って、一度罹れば免疫がつくはずなのですが、日本国内で大流行することもなかったので、そのまま多くの人が、抗体を持たないまっさらな状態で大人になってしまった。そうした経緯、背景が、40代を中心とした男性の間での風しんの流行を引き起こしているのです。

勝間 大人が風しんに罹ってしまうと、どんな症状が出るのですか?

高橋 実は、3割くらいの人は全く症状が出ないのです。不顕性感染と言うのですが、気づかないうちに罹り、その一方で、風しんは1人の患者から5~7人にうつしてしまうほど感染力が強いので、本人が気づかないうちに感染を広げてしまいます。それが怖いのです。残りの約7割は何らかの症状が出るのですが、高熱や発疹のほか、関節炎で日常生活に支障が起こるというのはよくある症状、一部重症化する人は脳炎などを起こすこともあります。

勝間 不顕性感染が約3割というのには驚きました。また風しんは、妊婦さんへの影響が最も大きな問題なんですよね。

高橋 その通りです。特に妊娠初期に風しん感染を起こしてしまうと、胎児に影響が残る可能性が高くなります。先天性風しん症候群というのですが、目に白内障を持って生まれてしまうケース、心臓の奇形を持って生まれてしまうケース、脳に影響を受けて精神発達遅滞で生まれてきてしまうケースなどがあって、そうした子どもは実際に一定数います。これは、その子の一生を左右してしまう重大な問題です。