気候変動への行動を一人で起こし、多くの若者たちに影響を与えたグレタ・トゥンベリさん。全世界で気候変動の危機感を訴える若者たちは増え続けています。一方、日本で中学~高校生世代といえば、流行には敏感で学業にも熱心なものの、社会活動に参加する子どもはまだ少数派です。その違いには、どのような背景があるのでしょうか。
10年前に家族でスウェーデンへ移住し、翻訳家や現地高校の教師として活動している久山葉子さんに、現地の高校生の様子や子育ての違いについて、リポートしてもらいました。
高校生のグレタさんの影響で人々が行動を変えている
国連気候行動サミットでのスピーチで、日本でも一躍有名になったグレタ・トゥンベリさん。彼女がスウェーデンで最初に注目されたのは、2018年の夏の終わりだった。当時15歳だったグレタさんは、8月20日から連日、「環境のための学校ストライキ」というプラカードを掲げて、国会議事堂の前に座り込んだ。ちょうど長い夏休みが明けて、新年度が始まる時期で、グレタさんは中学3年生に進級するところだった。国会議事堂前で彼女を取材するマスコミの数は日に日に増え続け、座り込みが始まって2週目にはスウェーデンでは皆が知る存在になっていた。
ご存じの通り、スウェーデンはもともと環境問題に対する関心度が高い。猛暑の夏がくれば「地球温暖化のせいだ」と危惧するし、温室効果ガスの排出量が多い畜産業で生産される肉を使った料理を避けたいという声に応え、今はたいていの学校で給食にベジタリアンメニューがある。グレタさんの行動力に感化され、この国の環境意識はさらに高まった。
しかしグレタさんが与えた影響はそれでは終わらなかった。2019年には、9月にニューヨークで行われる国連気候行動サミットに参加するために、飛行機を使わずにヨットで大西洋を横断することを発表したのだ。まさかそこまでやるとは。スウェーデンではFlygskam(フリーグスキャム、飛行機を使うことへの恥)という単語が登場し、夏休みは列車でヨーロッパを周遊することが急にトレンドになり、飛行機会社の広告も今まで安値重視だったのが、いかに環境に配慮しているかというのをアピールする路線に変わった。私の周囲でも国内の旅行・出張であれば飛行機ではなく列車を選ぶことが増えたし、グレタさんの行動で社会の意識が着々と変わっていくのが感じられた。

次ページから読める内容
- 高校生から気軽に政治活動ができるスウェーデン
- 「自分たちが社会を変えていけると思う?」「もちろん!」
- 若者が社会を変えた例はいくつもある
- フラットな関係、アンケート、学校には民主主義が徹底している
- 保育園のプロジェクトも子どもたちの意見で決める
- 〝隠れたカリキュラム〟から民主主義を学んでいく
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