学生向けのキャリア教育プログラムを展開する「スリール」を9年前に立ち上げた堀江敦子さん。共働き子育て家庭と学生をつなぐ「ワーク・ライフインターン」を通じてのキャリア教育、企業向け人材育成事業を行ってきた。実は、書籍『「育休世代」のジレンマ』で脚光を浴びたジャーナリスト・中野円佳さんとは幼稚園から中学校までの同窓生。

共に「女性のキャリアと子育て」の分野で発信を続け、今夏に堀江さんは『新・ワーママ入門』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、中野さんは『なぜ共働きも専業もしんどいのか』(PHP研究所)を上梓した。2人の話から見えてきた、“共働き子育てのモヤモヤを突破する思考とアクション”を紹介しよう。

戦後の経済成長期にあった社会規範が呪縛に

 パートナーの赴任に帯同する形で2年前からシンガポールに拠点を移したジャーナリストの中野円佳さん。東京大学大学院にも籍を置き、7歳と3歳の2児を育てながら執筆と研究活動を続けるが、「普段の生活はいわゆる“駐妻”です」。

 現地で暮らす専業主婦の女性たちとの交流を深める中で発見したのは、「共働きか、専業主婦家庭か。そのいずれかにかかわらず、女性がしんどい」という日本社会の課題だったという。

 その背景には、女性の家事育児能力に対する過剰な期待、非正規雇用に依存した労働市場、学校側から女性に期待される無償労働など、「企業・家庭・教育」が複雑に絡み合う構造がある(下図参照)。

■専業主婦前提社会の循環構造

出典:中野円佳さん『なぜ共働きも専業もしんどいのか 主婦がいないと回らない構造』(PHP研究所)
出典:中野円佳さん『なぜ共働きも専業もしんどいのか 主婦がいないと回らない構造』(PHP研究所)

 この循環を引き起こす一因となっているのは、戦後高度経済成長期を支えた「男性は長時間労働で企業を支え、女性は家事育児を一手に引き受けるもの」という規範。これについて、堀江敦子さんも「ワーママを悩ませてきた呪縛」だと指摘。「古い価値観や間違った思い込みを一つひとつ解いて、『このスタイルなら私もできる!』という呪縛からの具体的な脱却法を見つけていく姿勢が重要」と訴える。

 そのためには、まず、社会構造の変化を知ること。

 男性1人では家族を養うことが難しくなり、核家族化によって子育ての担い手を家庭外にも広げる必要が出ている。そんな環境変化を客観的に知ることで、親世代とは違う子育てスタイルを選ぶ合理性を理解することが、モヤモヤ解消の第一歩になる。