“見えない家事”は女性が負担している

―― 長時間労働のほかに、ムゾンさんは女性の視点から見てどんな障害があると考えますか。

ムゾン 障害はいくらでもあります。それも、目に見えづらいものが。一つは、企業の組織のあり方です。企業で同程度の能力の男女がいたとき、人事権のある人は「自分に近しい人」をポストにつけようとする傾向があります。現在、フランスの経営者や経営のボードメンバーはほとんど男性ですから、要職についている男性が、自分と似たような男性ばかりを任命する、ということが起きてしまうのです。結果として、「性別が男性である」ということが昇進にプラスに働くのです。これは中立公正な評価とはいえません。

 また、女性は仕事において、「何のために行う仕事か」を問い、答えを見つけようとします。しかし男性社会では、「なんとなく」とか「上から言われたから」とか、「今までそうしてきたから」という理由で多くの物事が進められている。そういう組織に入ると女性は、「ここではやっていけない」と感じてしまいます。

―― 家庭での役割分担についてはどうでしょうか。日本人男性に比べると、フランス人男性はずっと家事・育児に積極的です。内閣府の調査では、6歳未満の子どもを持つ夫の1日あたりの家事・育児時間を調べた国際比較で、フランス人男性は150分、日本人男性は67分でした(下図参照)。

ムゾン フランスでも、若い世代の男性のほうが、より家事・育児に関わっていこうとする傾向があります。しかし注意しなければならないのは、女性のほうが家事の要の部分を担いがちであるということです。例えば、女性は冷蔵庫の中の食材ストックを常に気にしていて、「そろそろ牛乳を買わないと」とか「そろそろ子どもの服を買い替えないと」と考えたりします。このような “目に見えない家事” を絶え間なくやり、さらに、料理など “目に見える家事” もやっている。男女の家事・育児の参加率を見る際は、“見えない家事”の負担も考慮するべきです。

 また、共働き家庭では、朝子どもを保育園に送っていくのが男性で、夕方迎えにいくのは女性、というケースが多いのですが、保育園の送迎は迎えにいくほうが仕事への影響が大きい。会議で男性が必要以上に長々と発言することがありますが、迎えを任されている女性は早く帰らなければならないのですから困ってしまいます。このように、共働き家庭においては、女性のほうがまだまだ男性より多くの家事・育児を負担しているのが現状です。

ガブリエリ その通りですね。女性が仕事で能力を発揮するには、男性がもっと家庭での役割に積極的にならなければいけません。

6歳未満の子どもを持つ夫の家事・育児関連時間(1日当たりの国際比較)
<span class="fontSizeL">6歳未満の子どもを持つ夫の家事・育児関連時間(1日当たりの国際比較)</span>
出典:内閣府男女共同参画局、男女共同参画白書平成27年度版 http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h27/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-03-06.html

―― 後編 では、「企業のルールを変革し、男女がより働きやすくするにはどうすればいいのか」というテーマで、引き続きお二人に話を伺います。

(取材・文/柳澤はるか、日経DUAL編集部 田中裕康 写真/谷本結利)