ポストは「家庭に専業主婦がいる前提」になっている

―― 男性と対等であろうとする女性や、仕事に意欲的な女性は窮屈な思いをしているということでしょうか。日本ではおしとやかで、男性に対してあまりものを言わない女性のほうが男性から“モテる”傾向がありますが、そのあたりはフランスではどうでしょうか。

ムゾン フランスでも、自分よりか弱い女性を好む男性が一定数いることは事実だと思います。しかし、知的で教養があるスマートな男性にとっては、仕事ができる女性は魅力的であり続けます。だから、女性へのアドバイスとしてフランスで言われているのは、「結婚するならそういうスマートな男性を見つけなさい」ということです。

―― 仕事において、女性が責任あるポストにつけない原因は何でしょうか。

ガブリエリ 女性が仕事で責任あるポストにつきづらいのは、そもそもそのポストの性質が、「家に専業主婦がいる男性」を前提に作られているからです。つまり、家庭のことは他の誰かがやってくれるという前提があり、仕事だけにすべての時間とエネルギーを注ぐことが要求されます。だから、女性はそのようなポストへのアクセスが難しくなってしまうのです。

ムゾン 長時間労働は女性にとって大きな障害です。子育て中の女性は「何時まででも仕事ができる男性」の働き方に合わせることは、物理的にできません。また、子どもの有無にかかわらず女性は生活の質を重視するので、このような長時間労働ありきの組織の中では「昇進しなくてもいい」と思ってしまう。

ガブリエリ 転勤も問題になります。転勤を何回以上経験しないと、あるポストに昇進できないといったケースもあります。本当にそれは必須条件なのだろうかと、問い直す必要があります。

―― 日本では、「女性が管理職になりたがらない」と、女性の“やる気の問題”を指摘する声もありますが、フランスではどうでしょうか。

ムゾン 私は以前、フランスの財務省で働いていたのですが、当時のある同僚は、とても野心にあふれた女性でした。しかし子どもができると、早く帰宅しなければならない罪悪感に悩んでいた。財務省では、子どもがいる女性は決まって、あまり負担の大きくない部局に異動させられていました。私も以前、女性が要職につけないのは本人のやる気や能力の問題なのでは、と疑う気持ちがあったのですが、実際は違いました。犠牲が大きすぎるために、女性は昇進を諦めるのです。

ガブリエリ 「女性の管理職を増やす」というと、一見「女性の問題」と思われがちですが、職場で前提とされているルールのほうに問題がある、ということに注意しなければなりません。変えるべきなのは女性の意識ではなく、ルールのほうなのです。

 例えば企業において、5日間泊まりがけの管理職研修があるとしましょう。それは子育て中の女性にとって、参加することは不可能に近い。でもそれを、日帰り形式に変えたら女性も参加できるようになります。女性は、“今のルールのままでは” 管理職になれない。それならばルールのほうを変えるべき、と考えるのは当たり前です。