あのハッピーセット®で本が選べるようになってから2年。子ども達と本との距離を縮めたいという想いが詰まった試みは、2年間で2000万冊を提供するという快挙を遂げました。しかし、そもそも読み聞かせや読書が子どもの未来によい影響をもたらすというのは事実なのでしょうか。答えは「YES」! 脳科学者・篠原菊紀さんに解説していただきましょう。そして、ほんのハッピーセットの開発から現在まで携わってきた日本マクドナルドのマーケティング担当者にも話を聞きました。

読み聞かせを月に1回増やすと読解力が8%アップ

きょうだいに均等に手をかけ、同じ学校や習い事に通わせても、同様の能力を発揮するとは限りませんよね。スポーツ、音楽、絵画などの能力は遺伝要因の影響が強く表れ、環境の影響は少ないことが、多くの研究で分かっています。ところが「言語能力」は環境の影響、とりわけ家庭環境の影響の強いことが知られています。つまり、親の働きかけ次第で、子どもが学習するための基礎体力は身に付けられるのです

「幼児への読み聞かせは脳にメリットがある」「読書と学力に相関関係がある」と、長期間の観察・研究で実証されたのは、実はごく最近のことなのです。2019年発表の米国の調査(*1)で「母親が月に1日、読み聞かせを増やすと、子どもの読解力や計算力の標準偏差が8%程度向上する」ことが分かったのです――これ、すごいことですよね。

僕も長年にわたり、幼児がいろいろな教材を使うときの脳活動について調べています。そこで解明できたのは、読み聞かせをしてもらっているとき、子どもの脳では次の4カ所が活性化しているということです。(1)ブローカ野(言葉を発する中枢 ) (2)ウェルニッケ(聴く中枢) (3)角回(文字の理解に関する中枢) (4)頭頂・側頭接合部(想像力の中核)。「頭頂・側頭接合部」は、他人の痛みや悲しみを感じ取り、比喩や出来事の裏側まで理解する、人間として欠かせない想像力をつかさどります。言葉だけではなく想像したり共感したりする力も、読み聞かせは育むんですよ。

「脳科学と子育て」分野の第一人者・篠原菊紀さん。ファンも多く、『勉強にハマる脳の作り方』『成功したければ前頭葉を鍛えなさい』など、ベストセラー著作も多数
「脳科学と子育て」分野の第一人者・篠原菊紀さん。ファンも多く、『勉強にハマる脳の作り方』『成功したければ前頭葉を鍛えなさい』など、ベストセラー著作も多数

「双方向読み聞かせ」を行うと集中力もIQも高められる

そういった効果は「双方向読み聞かせ」で一段と強まるそうです。「このとき、この主人公はどう思ったんだろう?」「○○君ならどうする?」「お話の続きはどうなるのかな?」と、子どもとやりとりしながら読み進めるのです。双方向読み聞かせで幼児の知能が高まることは、2013年、IQをテーマに行われた米国の研究プロジェクト「ライジング・インテリジェンス」(*2)で明らかにされました。

図鑑も双方向の読書にうってつけです。そもそも図鑑は、学者や専門家が「面白い」と感じたものを集め、体系化したもの。子どもにとっては列車や昆虫、動植物など、好奇心を刺激する“大好き”があふれる宝箱になりやすいんです。ほんのハッピーセットは絵本と図鑑から選べるんですよね。子どもが自ら好きな方を選択することで、一段とインタラクティブな読み聞かせが可能になるはずです。