親が子どもに「命」の大切さを教えるのは、容易なことではありません。たとえ口で「大事なものだ」と言ったところで、なかなか伝わらないかもしれません。

 「赤ちゃんが生まれることは奇跡です」と語る新生児科医の豊島勝昭さんは、かけがえのない命に接し、その大切さを肌で感じてきた一人です。病院の新生児集中治療室(NICU)には出産時の低体重や先天性の疾患などがある赤ちゃんがいて、はかなく消えてしまう命もあるからです。

 豊島さんは2008年から小中高生に赤ちゃんたちの姿を伝える「NICU命の授業」を行ってきました。テレビドラマ『コウノドリ』の医療監修も務めた豊島さんに、授業に込めた思いなどを聞きました。

授業を聞いて「いじめはいけない」と感想寄せる子も

――NICUでは、赤ちゃんはどのように過ごしているのですか。

神奈川県立こども医療センター 新生児科医の豊島勝昭さん
神奈川県立こども医療センター 新生児科医の豊島勝昭さん

豊島:NICUには、早産などで小さく生まれた低体重児、先天的な病気を持つ赤ちゃん、出産時のトラブルで容体が悪くなった赤ちゃんなどが入院します。赤ちゃんの33人に1人はNICUに入るという統計もあり、決して少ない数ではありません。中には400グラムと、ペットボトル1本に満たない重さで生まれてくる子もいます。

 NICUには両親も訪れ、赤ちゃんを抱っこしたり、話しかけたりします。親のぬくもりに触れたり、声をたくさんかけてもらうことで、赤ちゃんの発達にもいい影響が出るようです。私の勤務する神奈川県立こども医療センターのNICUは昨年、「ファミリーセンタードケア」という考えを基に、赤ちゃんたちが治療を受けながらでも長時間家族と一緒に過ごしやすいNICUに大規模改装しました。帝王切開後のお母さんが、集中治療を受ける赤ちゃんを抱きやすいように安定した椅子を常設したり、警報音がストレスにならないように室内に鳥のさえずりや小川のせせらぎ音を流したりして、親子がゆったりと過ごせる空間をつくったのです。

――豊島さんが2008年から小中高生に向けて行っている講演会「命の授業」は、12年間で63回を数えました。

豊島:始めたきっかけは、医師不足が深刻化する中、子どもたちに新生児科医の仕事に興味を持ってもらいたい、という思いからでした。このため当初は、内容も病気そのものや医療に関する話題に偏りがちでした。しかし生徒の感想文を読み、先生の話を聞くうちに、NICUの普段の姿を伝えるべきだと気付きました

 「命の大切さ」と一言で言っても漠然としすぎていて、学校では教えづらいテーマだと思います。しかし私が、NICUで懸命に生きる赤ちゃんと両親のことを真剣に伝えると、子どもたちは自分から、さまざまなことを考えてくれます。周りの友達に思いをはせ「いじめはダメだと思った」という感想を寄せる子もいます。

次ページから読める内容

  • 当事者・家族の思いを知れば不安は和らぐ
  • けなげに治療に臨む子どもたちを見て、新生児科医を志す
  • 医療の側から福祉・教育へ実態を伝え、理解を深める必要

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