マダニ、ヒアリ… 最近、危険な生き物の話がニュースをにぎわせています。その他にもスズメバチやケムシなど、私たちの身近には刺されたり、かまれたりすると怖い生物がたくさんいます。どんな危ない生物がいるのか、そしてどうすれば防ぐことができるのか。半年で15万部の大ヒット、小学館の図鑑NEO『危険生物』の担当編集者である根本徹さんに話を聞きました。

スズメバチの巣が1年で最も大きくなるのは秋

―― 刺す生き物としてまず思い浮かぶのがスズメバチです。

 「スズメバチというと、夏に動きが活発になる印象ですが、実は巣が一番大きくなるのは秋。新女王バチとオスバチが生まれ、巣が最大になります。市街地で特に注意すべきはキイロスズメバチです。家の軒下や雨戸の中、屋根裏などに巣を作り、50センチ以上の大きさになることもあります」

『危険生物』の担当編集者の根本徹さん
『危険生物』の担当編集者の根本徹さん

 「以前、岐阜県で開かれたマラソン大会で100人以上の人がスズメバチに刺される事件がありました。そのときはコース内にあった橋の下に巣があり、たくさんのランナーが橋を通過した振動などがスズメバチを刺激したようです。このように普段気付かないところに巣ができている可能性もあります。今の時期はベランダや庭に干してある洗濯物に、冬眠場所を探しているスズメバチがもぐりこんでいることもあるので、洗濯物を取り込むときは注意です

―― ハイキングなどに行くと、スズメバチが顔の周りをぐるぐる飛んでいることもありますよね。もしスズメバチが近づいてきたら、どうすればいいのでしょうか。

 「巣の10メートル以内に人が近づくと、スズメバチはまず偵察にやって来るのが習性です。顔の周りを飛んでいたのは、このときだと思います。ハチを手で追い払ったり大きな声を出したりせず、静かに立ち去りましょう

 「さらに巣に近づくなどしてしまって、スズメハチを刺激すると、スズメバチは顎をかみ合わせて『カチカチ』という音を出し、威嚇します。刺さずとも、針から毒液を飛ばすこともあるので要注意です。この威嚇を無視してさらに巣に近づくと、スズメバチが集団で攻撃を始めます。危険を感じたら姿勢を低くして、ゆっくりと10~20メートル離れましょう」

―― スズメハチは2度目に刺されると危険、と言われています。

 「1度刺されたときは平気でも、2度目に刺されたときに、発熱や吐き気、じんましんなどのアレルギー反応を起こすことがあります。特に気を失ったり、息ができなくなったりするなどの『アナフィラキシーショック』には注意です」

 「刺されたときは、刺されたところを水でよく洗ったり、傷口をつまんで毒をしぼり出したりしましょう。昔は口で毒を吸い出す人もよくいましたが、毒が口から体内に入ってしまうと大変ですので、吸い出すのはやめたほうがいいです。スポイトのように毒を吸い出す専用の道具もアウトドアショップなどで買うことができます」

―― 大人と子どもではどちらが刺されやすいのでしょうか。

 「どちらのほうが刺されやすい、というのはありませんが、子どもは追っ払ったり大きな声で騒いだりと、スズメバチを刺激する行動をしがちです。その点には注意をしましょう」

オオスズメバチ(左)とキイロスズメバチの巣/出典:小学館の図鑑NEO「危険生物」 (c)ruderal inc.
オオスズメバチ(左)とキイロスズメバチの巣/出典:小学館の図鑑NEO「危険生物」 (c)ruderal inc.
オオスズメバチ(左)とキイロスズメバチの巣/出典:小学館の図鑑NEO「危険生物」 (c)ruderal inc.