日経DUALで約1年前に取り上げた「離婚」に関する特集。そのときに実施した読者アンケートでは、約7割が「これまでに離婚したいとひそかに考えたことがある」と回答しました。その理由としては、「性格・価値観の違い」「家事育児分担の不公平」が多かったのですが、浮気・夜遊びなどの「異性関係」を挙げた人も14%いました。

 配偶者の浮気を疑ったときに考えるのが「証拠をどう押さえるか」ということ。もし探偵事務所に頼むことを検討する場合、どれくらいお金がかかって、何をしてもらえるのでしょうか? また、証拠を押さえられる確率はどの程度でしょうか。綜合探偵社TS代表取締役の林幸男さんと、悩みに合わせて探偵を紹介するサイト「探偵さがしのタントくん」相談員に話を聞きました。

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 まず前提として、本当に離婚を考えているのであれば、「探偵事務所に依頼したほうがいい」と話すのは、DUALの連載「弁護士さん、教えて」や離婚特集でもおなじみの弁護士法人・響の徳原聖雨弁護士。裁判などでも有効な証拠写真を自分で押さえるのは難しいからだといいます。また、探偵事務所の選び方としては「法律事務所と連携しているところ」(徳原弁護士)といい、自治体の公安委員会に登録されているか、ということも事前に調べるようにしましょう。

調査員は、一度顔を見れば覚えられる

日経DUAL編集部(以下、――) 街の看板や、雑誌広告、テレビなどで“浮気調査”という言葉を目にすることは多くて、ぼんやりしたイメージはあるのですが、基本的なことから聞きたいと思います。パートナーの浮気を疑って、調査をお願いすることになった場合、どれだけの時間がかかって、どういうことをしてもらえるのでしょうか。

自治体の公安委員会に登録されているかサイトなどで事前に調べつつ、その証明書が応接室などに掲示されているかも確認するとよい(写真は綜合探偵社TSの林幸男代表)
自治体の公安委員会に登録されているかサイトなどで事前に調べつつ、その証明書が応接室などに掲示されているかも確認するとよい(写真は綜合探偵社TSの林幸男代表)

綜合探偵社TS・林幸男代表(以下、) 基本的には、対象者の行動を調査員が尾行して、撮影、録音、記録をしていきます。事前の打ち合わせで、対象者の情報を色々と教えてもらい、そこから、何時に帰宅するのか、いつ飲みに行くのかなどの行動を分析し、調査日を決めます。調査日が決まったら、当日の朝、まず出勤を確認します。自宅から勤務先に行くまでを追い、持ち物や会社の出入り口を確認してから、いったん調査員は引き上げます。夕方から夜に調査を再開。対象者が勤務先から出てきてから、行動を追うことになります。

「探偵さがしのタントくん」相談員(以下、タント相談員) 「浮気相手の素性」も調査することができます。依頼する人の多くが、浮気相手が一体どんな人なのかまで調査してほしいとオーダーします。

―― 調査日というのは、どうやって決めるのでしょうか。

 状況によります。対象者のメールやLINEを見ることができるのであれば、浮気相手に会う日が分かりやすいので、ピンポイントで調査日を決めることもあります。逆に行動が読みにくいとか、夫婦の会話が一切ないとかいう場合には、帰ってくる時間が遅い曜日や週末を狙って、調査をすることになります。

―― 大きな会社だと1000人単位の人が出入りすると思います。朝に顔や持ち物などを確認すれば、調査員が夕方、本人を見失うようなことはないのですか。

 そうですね。朝に一回確認していれば、夕方は見た瞬間に分かります。写真だけだと似ている人もいますし、特に女性の場合は髪型や服装を変えてしまうと分からなくなってしまうこともあるのですが、一度本人を見れば覚えます。でもたまに似た人がいる場合もあって、間違えて調査員が別人を追ってしまうこともゼロではないのですが、調査員は複数人で動くので、対象者本人だという確認ができるまでは他の調査員が引き続き会社出入り口を張っています。当社の場合、調査員は4人で動くことが多いです。

―― 調査員は、女性だけとか男性だけとかで組むんでしょうか。

 男性2名、女性2名で分かれています。現場に溶け込む、目立たない服装というのが決まりですね。

―― 調査員になる人は、どういう経歴や能力をお持ちなんでしょうか。

 経歴には一切こだわりはありません。やる気と、仕事が好きという気持ちと、あとは目立たない人(笑)。ぱっと見でインパクトある方はちょっと……。調査員には、どこにでもいそうな顔立ちで、髪型やメイク、服装も溶け込むようにします。

―― 調査員になるのに何か資格は必要なんですか。

 資格は必要ないですが、実務の練習をします。だいたい1年間は調査員として実践の練習をして、1年後に試験をして合格した場合は調査員として現場に出られるようになります。実技試験では、調査員が立っている位置などをチェックします。単純なことですが、対象者が家から出てきたときに、調査員が立っている位置が悪ければ、バレてしまうので。朝イチはけっこう目立つんですよね。対象者が女性の場合は警戒しやすいので、立つ位置は非常に大切です。あとは本人を見分けられる能力などを確認します。