世界的に有名なうま味調味料を販売する味の素。最近はアミノ酸の研究から生まれた化粧品や健康食品でも知られ、幅広い年代にとって身近な会社だろう。その味の素でも、子育てや介護をしながら働きやすい制度が整い、働き方改革が進んでいる。もともと男女に関係なく活躍できる風土があったという同社に、制度や雰囲気の醸成がもたらした変化はどのようなものなのだろう。グループ長として多様なメンバーをマネジメントする女性リーダーに話を聞いた。社会的なムーブメントとなっているSDGsへの取り組みについてもリポートする。

今も働く母を見て育ち、働き続けることが自然だと思っていた

 味の素ダイレクトマーケティング部R&Dグループ長として働く斉藤典子さんは、1990年代前半に新卒で味の素へ入社。九州支社での営業職を皮切りに、低カロリー甘味料の商品開発、生協のプライベートブランドの商品開発、うま味調味料や塩の商品開発など、多様な部署を経てきた。特に、メーカーの中で価値を生み出す重要な部門である商品開発担当として「ものづくり」に長く携わってきており、現在も化粧品やサプリメントの開発を担当している。

 斉藤さんが入社した1990年代前半は、採用時点から男女比に差があった時代だ。「私の同期は事務系採用で男性26人、女性4人の採用と大きな差がありました。今では採用の男女比はほぼ差がなくなり、女性を積極的に採用して、能力を生かそうというのが、会社の方針になっています」

 味の素には全国に約1100人のマネジャークラス以上の管理職がおり、そのうち女性の管理職は約110人。斉藤さんは、現在その一人として、R&Dグループの7人の部下を束ねている。

 「私自身のことでいえば、母が自分が経営する美容院で仕事を続けているということもあり、働き続けることが自分の中では自然なことという思いが最初からありました。採用時の人数こそ少なかったものの、働く上で、女性だから不利だと意識したことはありません。管理されすぎず、主体性を持って働ける社風なので、私もいろいろな部署で自律的に努力を続け、それを見てもらえていたのかなと思います」

 社長がイクボス宣言をするなど、社内では共働きの親が働きやすい空気も醸成されてきた。「特に若い世代の社員は、入社10年以内に出産する人が増えています。子育てをしながら働く女性社員や、保育園にお迎えに行く男性社員もいて、場所や時間に制約のある社員の働き方を支援する制度づくりに会社が積極的に取り組んでいます」

 その1つが同社の働き方改革の一環として導入された「どこでもオフィス」。もともとあった在宅勤務制度の進化版で、事前申請しておけば、週1回の出社以外は、どこで仕事をしてもいいという制度だ。子育てはもちろん、介護やその他の事情を抱えていても、それぞれの事情に合わせた働き方が選択できる

 ペーパーレスの推進と共に、フリーアドレス制も導入。個人の机やキャビネットを廃止し、共通キャビネット・倉庫等のスペースも大幅に削減・集約した。「働く空間が効率化された結果、オープンなコミュニケーションスペースが増え、打ち合わせが活性化しています。より創造的な仕事の創出につながっているのではないでしょうか」

斉藤典子さん
斉藤典子さん