本業以外にもう1枚、名刺を持ってみませんか――。そんな提案をするのは、NPO法人「二枚目の名刺」代表、廣優樹さん。自身も会社員として商社に勤めながら、ビジネスパーソンらが本業以外の社会活動に取り組むことを後押ししています。働き方改革の一環として「副業解禁」の流れに勢いがつく一方、「何かをしたい気持ちはあるけれど、何からすればいいか分からない」という「自分探し難民」も生まれる昨今。副業に対するイメージの変化や、本業と両立するコツについて聞きました。

「副業」は社会に浸透しているのか

 社員の副業を制限する傾向にあった日本企業が変化してきたのは、ここ2~3年のことです。政府は2017年3月、「働き方改革実行計画」の中で、人材の流動化を後押しするための副業や兼業を進めると明言。サイボウズやロート製薬 など、かねて副業を認めていた大手企業に加え、2017年以降、ソフトバンクやユニ・チャームなどが相次いで副業を容認する制度を打ち出しました。

 2018年1月には、政府の方針を受ける形で、厚生労働省が企業の「モデル就業規則」を改訂したことも、大きな節目となりました。

 モデル就業規則とは、各企業が就業規則を定める上で参照する、いわばガイドラインの役目を果たすものです。ここにあった「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定が削除されたことで、副業解禁は今後ますます加速していくとみられています。

 「企業に属さないフリーランスも増えてきた中、『複業』という働き方を選ぶ人もでてきました 。つまり、本業以外の活動という意味合いがある『副業』ではなく、複数の『本業』を掛け持ちするという考え方です。また、今年6月には政府から、公務員の兼業、特に公益的兼業を正式に認めることを目指していくことが示されています。SNSなどを通じて、そうした新しい働き方を発信する個人も目立つように。すべての企業に変化の波が及んでいるわけではありませんが、副業は確実に浸透しつつあります」(廣さん)

変わりつつある「副業」の捉え方

 そもそも、「副業」という言葉を目にしたとき、具体的にはどのような働き方を思い浮かべるでしょうか。

 一言で「副業」といっても、さまざまな形態があります。働き方改革の中で主にイメージされているのは、個人が職場の承認を得た上で、外部の仕事を引き受けるというもの。有償と無償、両方のケースがあります。その目的も、起業準備など自己実現の追求から、クラウドソーシングサービスなどを介した「隙間時間」の活用まで、十人十色といった状況です。投資活動やインターネット売買も、広い意味では副業と捉えられます。

 「副業というと、従来は『隠れてやるもの』『小遣い稼ぎ』などのイメージが一般的でした。しかし、現在のトレンドは異なります」と廣さん。

 「働くモチベーションになる要素は3つあると思います。お金、やりがい、自己成長です。大切なのは、『副業』という選択肢を持つことで、3要素すべてを一つの会社や今の仕事だけで実現しなくてもよくなるということ。人生の幅が広がるんです」(廣さん)

「お金、やりがい、自己成長――。3つすべてを一つの会社で満たす必要はありません」(写真はイメージ)
「お金、やりがい、自己成長――。3つすべてを一つの会社で満たす必要はありません」(写真はイメージ)
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● お金<やりがい どんなことでも「まずは動いてみて」
● 中堅・ベテラン社員こそ「失敗経験」を積む場が重要
● 「結果を出す」「信頼関係」「タイムマネジメント」が成功のカギ
● 新しいことは「チームで動く」ことを前提にチャレンジ
● 4児の共働きパパの家庭内タイムマネジメントは?
● 「家族もチーム」夫婦で家事育児を分担 一人時間もキープ
● 迷っている人は、まず自分自身を「会社の外」に置いてみよう