―― 息子さんが将来、お父さんと同じように役者になりたいと言ったらどうしますか?

佐藤 もう、それは体を張って止めます。基本的に浮き草稼業ですし、不安定の最たるものだし。基本的に誰でもなれるけれど、食っていくのは非常に大変だと思うので。それに、もし役者になりたいと言い出すとしたら、僕を見て「楽で、華やかそうだから」というのが動機のような気がするんですよ。実際は全然違うのに。

 なので、最初は止めます。それでも「どうしてもお芝居をやりたいんだ」という気持ちが本物だったら、許すかもしれないですね。子どもにはやりたいことをやってほしいですし、人に迷惑をかけずに、自分が笑顔でいられることをやってほしいと思うので

 僕が役者になりたいと思ったきっかけは、小学校4年生、9歳のときの学習発表会のときです。面白くもなんともないきっかけで恐縮ですが(笑)。

―― 9歳のときに役者を志して、その夢をかなえたのですね。今、9歳の自分にメッセージを伝えるとしたら?

佐藤 なんだろうな、「まあ、役者にはなれたけどね。今の君は全くちゃんとしてないけど、40年後の君も全くちゃんとしていないぞ。だから、気楽にやれ」ですかね。

息子の小学校最初の夏休みは妻に任せきり

―― 仕事で忙しくても、お子さんと過ごす時間は確保できていますか?

佐藤 忙しいとなかなかね…。最近も、舞台の稽古が8月1日からあって、9月1~30日まで地方を含めた公演がありまして。息子が小学校に入って初めての夏休みなのに、と思って、7月の終わりごろにまとめて、海に行ったり、旅館に泊まったりしました。だから、8月は、子どもと遊ぶことに関しては嫁に頼っちゃいましたね。夏休みの宿題も、読み聞かせに付き合うくらいだったなぁ。

 舞台などで家を空けるときは、毎日電話を入れます。嫁とは24年ほど一緒にいるので、僕のことをよく分かってくれていて、時には仕事のことも相談する頼もしい存在です。今年のような夏休みは、嫁と仕事のスケジュールを相談しつつ、息子にも電話を代わってもらって会話したり、嫁と息子で舞台に来てもらったりして乗り切りました。

 息子は「何日に帰ってくる? 僕が学校休みの日? 帰ったら野球やろうね!」なんて言ってくれて。なのに、帰った後、それを僕が完全に忘れていてね。「野球やるよね」と息子に言われて、「ちょっと今、忙しいな」なんて答えちゃったんですよ。「約束したじゃん!」と言われて、すぐに野球やりましたけどね(笑)。

息子に安心して見せられる映画の仕事をしました

 留守が多かった夏休みだったので、映画『ルイスと不思議の時計』を息子と一緒に見に行くのが、今から本当に楽しみなんですよ。主要キャラクターのルイス、ジョナサン、ツィマーマンは、3人とも負を抱えていて、僕が声を演じたジョナサンはポンコツだし、ツィマーマンには過去に悲しい思い出があるし、ルイスは両親を亡くしていて、転校先でも浮いています。そんな負を抱えた3人が魔法で力を合わせて、圧倒的な力に挑む物語です。

 原作(1973年に出版されたジョン・ベレアーズの児童小説『壁のなかの時計』)は、魔法で悪の存在と戦う『ハリー・ポッター』の原点ともいわれています。年齢、性別問わず、家族みんなでワクワク楽しんでもらえるファンタジー映画です。これなら、安心して息子に見せられます(笑)。

 ツィマーマンの声を宮沢りえさんが演じています。ルイスの声は『名探偵コナン』の高山みなみさん、ルイスの友達のタービーを『ポケットモンスター』シリーズのサトシ役の松本梨香さん、同じくローズを『PEANUTS スヌーピー ショートアニメ』でチャーリー・ブラウン役をやっている矢島晶子さん、ルイスの母役を『耳をすませば』の雫役の本名陽子さんと、超人気声優の方々が演じているので、共演できて非常に光栄でした。子どもたちもみんな、きっと大喜びして見ると思いますよ。

『ルイスと不思議の時計』
10月12日(金)公開 配給:東宝東和 公式サイト:https://lewis-movie.jp/

(取材・文/清水久美子 撮影/小野さやか)