重大事故の報告件数は3年で約2倍

 内閣府によると、2019年の認定こども園・幼稚園・保育所など(※)で発生した事故の報告件数は、1299件だった。前年より78件増加した。事故は死亡事故や治療に要する期間が30日以上の負傷など重いものを指す。

 2016年は587件。3年間で2倍以上に報告件数が増加している。

※認定こども園(幼保連携型、幼稚園型、保育所型、地方裁量型)、幼稚園 、認可保育所、小規模保育事業、家庭的保育事業、居宅訪問型保育事業、事業所内保育事業(認可)、一時預かり事業、病児保育事業、子育て援助活動支援事業(ファミリー・サポート・センター事業)、子育て短期支援事業(ショートステイ、トワイライトステイ)、認可外保育施設(企業主導型保育施設、地方単独保育施設、その他の認可外保育施設)、認可外の居宅訪問型保育事業

■保育所などでの事故報告件数
■保育所などでの事故報告件数
事故報告件数は増加傾向(出所:内閣府)

 内閣府の担当者は「保育所が事故の報告をより適切にするようになっている」と話す。一方、日本総研の池本氏は、「保育所の急増が一因とも言える。待機児童数を減らすため、各自治体は『施設を増やすこと』を最優先にしてきた。園庭の確保や公園遊び、資質のある保育士を雇用するなどの『保育の質の向上』や保育士の待遇改善といった問題は後回しにされてきた面もあるのではないか」と指摘する。

 池本氏は保育士の労働環境の悪化にも警鐘を鳴らす。「給与面や配置基準などの課題の多くが未解決のまま残されている中、コロナ禍で保育所の机などのこまめな消毒作業や子どもの手洗いの徹底といった新たな責任も生じている。これまでも十分に忙しかった保育士の負担がさらに重くなっている」

 保育所の多くは密閉空間であることに加えて、集団の規模もそれなりに大きい。未就学児は窒息のリスクなどが考慮され、マスクの着用が義務付けられていない。「保育士の中には『感染のリスクが高いのに、医療従事者ほどには心配されない』といった不満も聞かれる。一層の保育士不足となり、保育の質の低下につながりかねない」

 待機児童数は減りつつある。一方、保育サービスの根幹を支える保育士の労働環境の改善が進まなければ、「保育の質」に綻びが生じてしまうかもしれない。

取材・文/飯島圭太郎