希望しても保育所などに入れない待機児童の数が過去最少となった。都市部を中心に施設が増えたことが理由だ。一方、専門家からは急ピッチで進む施設の増加や新型コロナウイルスによる保育士の雇用環境の悪化を懸念する声が上がる。内閣府のまとめによると、保育所内での重大事故の報告件数が増加するなど懸念も多い。待機児童数の現状や課題を取材した。

保育園の定員数が増えている

 厚生労働省によると、全国の待機児童数は4月1日時点で1万2439人と過去最少を更新した。待機児童数の減少は3年連続となる。

■待機児童数
■待機児童数
2017年をピークに3年連続で減少している(出所:厚生労働省)

 待機児童数の多い都市部で保育所などの設備が増えた。厚労省によれば、保育所などの定員数は4月までの1年間で7.9万人増え、約297万人に拡大した。

 日本総合研究所の上席主任研究員、池本美香さんは「施設の増加に加え、出生数が減少したことも背景にある」とみる。2019年の人口動態統計では、日本人の国内出生数は86万5000人と前年比で約6%減で過去最少となった。

 以前より保育園に入りやすくなってきたと言えるものの、課題もある。池本さんは「待機児童数が減少傾向にあるのは評価できるが、保育所などでの重大事故件数の急増などが懸念材料」と指摘する。