解凍の基本は加熱解凍と流水解凍

 「おいしく食べるための冷凍テクニックは、冷凍するときだけでなく、解凍するときにもあります」と、西川さんは続けます。

 「解凍方法は加熱解凍や冷蔵庫解凍、流水解凍など、いくつかの方法がありますが、一番大事なことは、解凍するとき食材にダメージを与える温度に長く置かないことです。その温度は、マイナス5~マイナス1℃と、10~40℃。冷凍した食材をマイナス5~マイナス1℃の温度帯に長く置くと、食材の中にできた氷の結晶が大きくなって組織を壊し、ドリップといううまみ成分が溶け出してしまうのです。

 10~40℃は、いわゆる常温にあたりますが、この温度帯だと食材が酵素によって変化しやすくなります。パンなど、解凍してそのまま食べられるものは常温解凍でもかまいませんが、その場合もできるだけ涼しい場所で解凍しましょう」

 西川さんおすすめの解凍方法は、「加熱解凍」と「流水解凍」です。加熱解凍は、フライパンや鍋、電子レンジなどでそのまま調理する方法、流水解凍は、食材に水を流し続けて解凍する方法です。

 「加熱解凍は、マイナス5~マイナス1℃と10~40℃の温度帯を早く通過するよう、“できるだけ高い温度で短時間”行うのがポイントです。この方法には、カットした野菜や貝類などが適しています。食材によっては、凍ったままゆでたり、いためたりしてもOKです。

 流水解凍は、水の熱伝導を利用した方法です。ボウルに水を入れてジッパー付きの冷凍保存袋を浸し、水道水を流し続けてください。この方法には、一部の肉や魚が適していますが、夏場などは水道水が温かい場合もあるので、そのときは流水でなく氷水に漬けたほうがいいと思います」

メリットが多い「下味冷凍」のススメ

 さらに、西川さんがおすすめするのが「下味冷凍」。食材を調味料に浸したり、塗ったりした上で、冷凍保存袋に入れて保存する方法です。

 「下味冷凍には、3つのメリットがあります。まず1つ目は、調味液が食材の表面をコーティングして、バリアを作ってくれるので、食材の劣化が防げるということ。2つ目は、冷凍中や解凍中に味が染み込むため、調理時に調味液を漬けこむ時間が必要なく、時短になること。最後に、調味液が保水作用を持つので、食材がしっとりとおいしくなることです。みりんや砂糖、はちみつなど、甘みのあるものを加えると、よりしっとり仕上がります。

 やり方としては、冷凍保存袋に食材と調味液を入れ、食材表面に調味液が行きわたるように軽くまぜるだけでOKです。食材がつぶれるので、もみ込む必要はありません」

 下味冷凍は、素材として使えるものと調理完成品として使えるものの2パターンに分けられます。

 「素材として使える下味冷凍は、例えば、しょうゆ+みりん、オリーブオイルなどシンプルな調味液に漬けるもの。アレンジしやすいので、煮物にしたり、いためものにしたり、その日の気分に応じて使えます。

 調理完成品としての下味冷凍は、しょうが味やカレー味といった、味が決まったものを指します。アレンジの幅は狭まりますが、加熱すればすぐに食べられるので、時短になるのがいいところです。自分が使いやすいほうで冷凍保存するといいでしょう」