もはや共働きが珍しくない時代、子どもが生まれたら、夫婦で育児休業を取りたいという人も増えています。しかし、「うちの職場では前例がない」「周囲に迷惑を掛けそう」と男性が育休取得をためらったり、女性でも希望する期間を取れないことがまだまだあるようです。そんな中、東京都と共に就労支援を行う「東京しごと財団」が、ママ・パパの育休取得を応援する事業を開始しました。小池百合子都知事が掲げる「働き方改革」の一環でもあるこの事業、当事者であるママ・パパだけでなく、企業にとってもうれしい内容なのだそうです。担当者に詳しく聞いてみましょう。

社員が育休を取ると企業に奨励金が給付される

 産婦人科やイベント等で「パパの育休取得を応援します!」「育休取得 職場復帰 職場環境整備を応援します!」と書かれたかわいいチラシを目にしたことはありませんか? 東京しごと財団は2018年に「働くパパママ育休取得応援事業」をスタート。当事者にも企業にもメリットがある事業ということもあって、育休中やこれから育休を取ろうと考えているママ・パパにじわじわと認知が広がっています。事業の内容はママ向け、パパ向けの2コース。主に次のような内容です。

働くパパママ育休取得応援奨励金 働くママコースの内容
・子どもが1歳に達するまでに育児休業を開始し、1年以上取得した後、復帰し、3カ月以上雇用されている
・テレワーク制度を就業規則に規定するなど、3つの環境整備要件を満たしている
・以上の要件を満たした企業に125万円の奨励金を支給する(年度内1回のみ・対象は都内中小企業)
働くパパママ育休取得応援奨励金 働くパパコースの内容
・男性従業員が連続15日以上育休を取得(子どもが2才になるまでの間)し、復帰後3カ月以上継続雇用されている
・上記の場合、育児休業連続15日取得で25万円の奨励金を支給。それ以降15日育休取得するごとに25万円加算。上限300万円。(年度内1回のみ・対象は都内企業)

※支給には諸条件があります。詳しくはこちらをご覧ください。
東京しごと財団 雇用環境整備課

今回話を聞いた東京しごと財団の皆さん。左から東京しごと財団の雇用環境整備課育児休業促進支援担当係・道法恵美さん、雇用環境整備課長・中村満輝さん、総務課施設担当係長の髙島弘行さん。髙島さんが持つのは、同財団の広報リーダー 「サイようくん」。ツイッターアカウントも持っている
今回話を聞いた東京しごと財団の皆さん。左から東京しごと財団の雇用環境整備課育児休業促進支援担当係・道法恵美さん、雇用環境整備課長・中村満輝さん、総務課施設担当係長の髙島弘行さん。髙島さんが持つのは、同財団の広報リーダー 「サイようくん」。ツイッターアカウントも持っている

育休だけでなく、働き続けやすい環境改善を含んでいる点に注目

 雇用者が育休を取得することで、企業には奨励金が支給されるというこの事業。「うちの職場では育休を取りづらい」と感じていたママ・パパには、育休の相談をするよいきっかけになりそうです。

2歳の女の子を持つ中村さんは保育園の送りを担当している。「トライアルでテレワークを実施した日にはお迎えにも行けました」
2歳の女の子を持つ中村さんは保育園の送りを担当している。「トライアルでテレワークを実施した日にはお迎えにも行けました」

 この事業の担当者である、東京しごと財団雇用環境整備課長の中村満輝さんによると、「東京都では女性の育休取得率は9割を超える一方、その期間が1年未満という人が4割弱いる」という現状があるのだそう。そのため、「働く女性が自分で希望する休業期間を取得して、その上で復帰し、その後も活躍してほしいというのが『働くママコース』を設定した目的になった」と言います。

 確かに、ママたちにとっては育休を取るハードルはそれほど高くはなくなってきたものの、職場との兼ね合いもあり、1年間休めるという人は少ないという現実があります。しかも、復帰したあとには、子どもの病気や通院、園や学校行事への参加など、さらなる障壁が待っています。ママが「働き続ける」ことは、まだまだ大変なのです。

 「そういった現状を踏まえて、『働くママコース』には、働く環境を整備するという要件も設定しました。その一つがテレワーク制度を就業規則に規定することです。子どもが病気になったときにも、自宅などで仕事ができるので、周囲への気兼ねも軽減できます。東京都は小池百合子知事を先頭に『働き方改革』『女性の活躍』を掲げています。ママが活躍するためにもぜひ、『働くママコース』を企業の人事担当者や当事者に知ってもらい、活用してほしいですね」(中村さん)。