育休取得が子育て、働き方、職場に変化をもたらした

4歳の男の子、3歳の女の子を持つ髙島さん。「1人目のとき、最初は妻のワンオペ状態。家が散らかっていたのを『なぜ片づけないの』と言って妻が激怒した」のが育休を取るきっかけとなったそう
4歳の男の子、3歳の女の子を持つ髙島さん。「1人目のとき、最初は妻のワンオペ状態。家が散らかっていたのを『なぜ片づけないの』と言って妻が激怒した」のが育休を取るきっかけとなったそう

 ママが育休を取ることが当たり前になっている一方で、パパの育休取得はなかなか進みません。実は、東京しごと財団でも、育休取得者第1号が出たのはほんの数年前のことなのだそうです。その当事者である同財団総務課施設担当係長の髙島弘行さんは、第1子が1才になる直前に育休を取得。「それまではママっ子だった息子が、育休取得後は、私が帰宅すると『パパ―ッ』と言って、玄関に出てきて抱っこを要求してくれるようになりました。これはもうたまりません」と微笑みます。「その反面、1日中子どもと一緒にいることで、育児の苦労も痛感しました。これは、休日や夜にちょっと触れあうだけではとても分からない大変さです。ぜひ、男女を問わず、育休を体験してほしいですね」(髙島さん)。

育休取得者が出ることは組織が成長するきっかけにもなる

 「復帰後は、とにかくわが子に会いたくて、早く帰れるように仕事のやり方を改善しました」という髙島さん。育休を取ったのをきっかけに、「(子どもが小さいから)打ち合わせは早い時間の方がいいよね」と、同僚たちが時間や段取りを考えてくれるようになった」とも話します。「育休は自分の働き方にも職場にも影響をもたらすのだなと感じています」(髙島さん)。

 ところで、職場で育休第1号だった髙島さんは、育休を取得する際に、どのように上司に相談したのでしょうか。「まず、職場にどんな育児制度があり、自分が利用できるのかをしっかり調べました。そして、自分が担当する仕事を棚卸し、前倒しできるもの、他の方にお願いできるもの、どうしても自分でないとできないものを分類し、自分がいない間に仕事をどう回すかをきちんと考えてから相談しました。『育休を取りたいので、その間はこんなふうにお願いしたい』と伝えたところ、『いいんじゃないの』『じゃぁ、こうしようか』と一緒に考えてくれたんです。上司も内心はヒヤヒヤだったかもしれないです。でも私の『家族のために育休を取りたい』という思いを受け入れてくれました。これはうれしかったですね」(髙島さん)。

 「男性の場合は特に、育休取得を言い出すのはとても勇気がいると思います。でも、会社で初めて育休を取得することで、他の男性職員の「育休を取る」という選択肢を増やすことにもなります。自分がいなくなることで会社に迷惑をかけるかもと心配な方も、『働くパパコース』のような制度を会社に提案することで、理解が得やすくなると思いますよ。」(髙島さん)。

 ママにしろ、パパにしろ、育休取得者が出ることは組織が成長するきっかけにもなると髙島さんは話します。「上司のいちばんの心配は、仕事を回すことだと思います。理由が育休ではなくても“誰かが急に抜ける”ということは、組織ではありうることです。そのときに各自の仕事や、組織全体をどう回していくか考えておくのは業務遂行には必要なこと。メンバーの育休取得は、その良いきっかけにもなるのではないでしょうか」(髙島さん)。

これからは「男性でも育休がとれる企業」が選ばれる時代に

 中村さんも育休取得による企業のメリットに言及します。「今は人材不足の時代です。求職者は働きやすさでも企業を判断しています。東京都のデータでは、9割以上の企業が男性の育児参加に前向きに考えているものの、具体的な取組を行っている企業は半数以下です。そんな中で、『育休復帰後も子育てしながら働きやすい制度がある』『男性でも育休が取れる』ということは、企業の大きな強みとなるでしょう」(中村さん)。

 育児休業は子どもが赤ちゃんの間だけ。子育てを通して自分が成長したり、仕事に対する気持ちを見直せる貴重な機会となります。育休中のママ、育休を取りたいと思っているパパはぜひ、『働くパパママ育休取得応援奨励金』を勤務先に知ってもらい、自社の働き方改革を一歩進めてもらってはいかがでしょうか。

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東京しごと財団 雇用環境整備課

(取材・文/福本千秋 撮影/木村 輝)