パパコースはボトムアップが目的 連続15日から利用可能

 もう一つの「働くパパコース」にも大きな注目が集まっています。中小企業に限定するママコースと異なり、パパコースは企業規模は問わずに利用できること、連続15日という短期間でも奨励金が支給されることが大きな特徴です。「東京都での男性の育休取得率は12.3%です。1年前に比べると4.9ポイント増加しましたが、それでも女性に比べるとかなり低い状況です。まずは、ボトムアップを図るという目的を掲げ、すべての企業を対象としました」と中村さん。

 中村さんによると、男性の育休期間は5日未満という人が一番多いのだそうです。女性に比べると本当に短期間なのに驚きます。「そこからもう少し長く、2週間以上取って、しっかり育児に参加していただきたいという思いがあり、15日という設定にしました」(中村さん)。

育休取得・職場環境整備のきっかけに活用してほしい

中3の娘、小5の息子を持つ道法さん。「2人目の育休のときは、上の子の育児が難しい時期でした。じっくり向き合えたのがよかった」と振り返ります
中3の娘、小5の息子を持つ道法さん。「2人目の育休のときは、上の子の育児が難しい時期でした。じっくり向き合えたのがよかった」と振り返ります

 この事業の広報や相談、申請の受付を担当する同財団の雇用環境整備課育児休業促進支援担当係・道法恵美さんは、早速、本事業の社会的な意義を感じていると話します。「企業にお勤めの女性からの相談で、ご自身が職場で初めての育休取得者になるということでした。『職場に復帰支援の制度が整備されていないのですが、この奨励金をきっかけに、経営層に相談してみたい』と言っておられました。5年、10年前に比べれば、育児と仕事を両立するための制度の整備も進み、女性も活躍しています。しかしそれも社会の一部の話でまだ全体には行き渡っていないのですね。相談をお聞きして、改めてこの制度の意義を感じました」(道法さん)。

 道法さん自身も中3と小5の2人の子を持つワーキングマザーです。「下の子のときは保育園入園のタイミングや、職場への影響を考えて、育休を3か月半で切り上げました。慣らし保育も含めると2カ月ちょっとで保育園に預けるのはさみしくもあり、もう少し一緒にいたいなと思ったのを覚えています」(道法さん)。

制度を作ることで両立を応援する〝風土″が育つ

 復帰後も、子どもが病気になって早退したり、休んだりする度に、後ろめたさがあったという道法さん。産前と同じように仕事をしなければというプレッシャーや不安を感じていたと言います。「私の場合は、周囲の人が理解して応援してくれたのに救われました。育児と仕事の両立を応援する〝職場の風土″があるとないとでは大きな違いがあると思います」(道法さん)。

 「企業側が、育休を取った人に復帰してほしいと考えるなら、やはり、制度として働きやすい環境を整え、仕事と育児を両立しやすい雰囲気を創り出すことが大切です。制度があることで、企業側の考え方が社員全体に周知され、育児中の社員を応援する〝職場の風土″が生まれてくると思うのです」と道法さんは自身の体験も踏まえて話します。