* 今回は、日経DUALの連載「治部れんげ 小学生男子とジェンダーを語る」の筆者、治部れんげさんが寄稿する、単発ルポをお送りします。 *

 男性と同等かそれ以上に働いてきた女性の多くがぶつかる「壁」。それは出産後、仕事に復帰した所にそびえている。補助的な業務に配置転換になったり、もしくは同じ部署でも出張の機会が減ったり……。育児時間を確保するため、自ら希望した場合はともかく、そうではないのに「マミー・トラック」に陥る女性は納得がいかない。

 この記事では、ワーキングマザーが育児中にもモチベーションを維持し、昇進の見通しを失わずに働き続けるための方法について考えたい。事例として、独立行政法人国際協力機構(以下、JICA)の人材マネジメントを取り上げる。

必要とされる「フェアネス」は、人員構成とアサインメントの2つ

 それは7月半ばのこと。知人の依頼でJICA労働組合主催の「働き方」セミナーで司会役を務めた。その席上、JICA研究所長の萱島(かやしま)信子さん、審査部環境社会配慮審査課課長の永井進介さんにキャリアや家族生活の両立について聞いた。

 萱島さんは、かつてバングラデシュに勤務した際、2人いるお子さんのうちの一人を同伴したそうだ。もう一人のお子さんは夫と日本に残った。「子育ては大変なこともありますが、子どもがいるから頑張れることもあると思います」という言葉には説得力があった。

 永井さんは、かつて世界銀行に出向しワシントンD.C.で勤務した際、職場と交渉して妻の育休時期とタイミングを合わせたという。今は共働きで2人のお子さんを育てるため、勤務地を国内の首都圏に限定している。一方で仕事上での成果が認められ、昇進も果たした。男性も家庭責任を果たしながらキャリアを諦めなくてもいいことを体現していた。

 JICAと言えば、一般には青年海外協力隊のイメージが強い。筆者のいとこも協力隊員としてジンバブエに滞在していたことがある。また、JICAは日本政府の看板を背負い、政府開発援助(ODA)を実施する。途上国支援の仕事で多忙は当たり前。海外勤務も多い。きっと男性が多い職場なのだろう……と思っていたら、実態はまるで違っていた。

 見出しで挙げた「フェアネス」は2つ。1つ目は採用における男女平等である。フェアな採用が男女ほぼ半々の入職につながる。自然、共働き子育て層も増えていく。2つ目はアサインメントだ。性別でなく実力や適性で仕事を割り振る風土が働きながら子育てする親のやる気を引き出す。

 「1800人いる総合職のうち、4割が女性です。新卒採用でも約半数が女性です」。JICA人事部給与厚生課の福澤叔子さんは話す。

 人口構成を見ると、現在の40~50代は男性が多いが、30~40代は男女間の人数の差が少なくなる。JICA職員同士の結婚も多く、配偶者の海外勤務と合わせて出産し、育休を取得するケースも珍しくない。人材マネジメントの特徴は「男女を問わず仕事をアサインすること。管理職登用の条件に在外勤務経験があること」(福澤さん)である。前出の萱島さんは30年以上前に入職した際、予想していた「お茶くみ」がなかったことに驚いたそうだ。「当時から男女平等でした」と話す。

 通常、国内で2年ずつ、2つの部署を経験した後、5年目に海外赴任する。海外勤務は概ね27~30代前半となり、妊娠・出産等のライフイベントと重なりやすい。組織内では、近年、結婚年齢が早まっているような印象があるそうだ。育児とキャリアは、もはや二者択一ではなく、両方手に入れるものになりつつある。

次ページから読める内容

  • 男性職員も、自分のキャリアを大事に思うからこそ、家族も大事にする
  • 「資生堂ショック」の背景にあった問題点
  • 女性に「いずれキャリアトラックに戻って」と、産む前に伝える必要性

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