育児のコツは先輩パパから。父親どうしつながりが増えている

鼎談は「佐賀県立図書館 こころざしの森※」で行われた。普段は親子連れが絵本を楽しむ畳敷きのスペース。育児や働き方の課題について盛り上がる3人。※「こころざしの森」の「森」の字は3つの「本」の字で校正した創作漢字
鼎談は「佐賀県立図書館 こころざしの森※」で行われた。普段は親子連れが絵本を楽しむ畳敷きのスペース。育児や働き方の課題について盛り上がる3人。※「こころざしの森」の「森」の字は3つの「本」の字で校正した創作漢字

山口知事(以下、敬称略) 先日、育児中のパパと話したときに、「育児や家事について、妻から教えてもらったり、あれこれ言われることに抵抗があるけれど、同じ男性から話を聞くとスッと腑に落ちる」と言う話になって、意外な発見だったのだけど、確かに男ってそういうものだよなと感じた。

安藤さん(以下、敬称略) 女性に指摘されると身構えてしまうんだろうね(笑)。部活の先輩的な存在からだとアドバイスも受け入れやすいのかもしれない。例えば、「子どもを寝かしつける秘伝」なんかも、先輩パパからなら教えてもらうとか

山口 そういう関係こそ、まさに今、やろうとしていること。子育てのリーダーパパを育成して、後輩パパに教えていく。そんなつながりをつくりたいと思っています。男性同士のつながりって、職場ぐらいで、地域ではなかなかないですから、そういう関係作りのお手伝いをしていきたいと思います。それが「マイナス1歳からのイクカジ」の目標の一つ。これは安藤さんが得意とするところですね。

2006年にファザーリング・ジャパンを設立した安藤哲也さん。1962年生まれ。フルタイムで働く妻と共に3人の子を育て、保育園の送迎はほとんど担当。人生100年時代に向けて「ライフシフト」問題にも取り組んでいる
2006年にファザーリング・ジャパンを設立した安藤哲也さん。1962年生まれ。フルタイムで働く妻と共に3人の子を育て、保育園の送迎はほとんど担当。人生100年時代に向けて「ライフシフト」問題にも取り組んでいる

安藤 そうですね。ファザーリング・ジャパンは九州にも支部があるのだけど、佐賀でも子育てに積極的に関わるパパが増えてきていますよ。子どもと一緒に焚火をやったとか、パパサークルを作ったという話を聞きます。ゆるいつながりで、それぞれが参加しやすい形で参加しているようですね。

育児をするとリスクマネジメント能力がつく!?

山口 うちの子どもも、中学生、高校生になったけど、育児が大変な時期はあっという間にすぎるね。「いつか育休を取ろう」と思っている間に子どもは大きくなってしまう。育児を楽しめるのは期間限定だよとよくパパたちに言っています。それに、子どもが思春期になったとき、子どもが親にどう接してくるかは、幼いころの関わり方にかかっている

安藤 うちも娘は中学生のころ、悩みがあると僕に相談に来てくれました。普通の家庭だったら、中学生の女の子は絶対パパには行かないよね。でも、僕は、娘が小さいころ、絵本を6000冊読み聞かせして、保育園にも毎日のように行っていたから。中学校の三者面談も全部僕。妻がフルタイムで働いていたので、「じゃあ、俺が行くよ」と。保育園から呼び出しが来てお迎えに行ったり、病院に連れて行くのもやっていました。母親じゃなくてもできるしね。だから中学生になっても相談してくれたのだと思う。

編集部(以下、――) 青野さんはまさに育児真っ盛りですが。やはりお子さんを保育園や病院に?

青野 そうですね。全体量からすると妻のほうが多いですけど、なんとなくやっています。

山口 青野さんは昔からそういうタイプだったのですか? 育児参加のきっかけは?

青野 安藤さんや文京区の成澤区長に勧められたのがきっかけです。第一子の長男が生まれたときに「青野さん、育休取ったら」と。「社長が育休を取ったら話題になるよ。サイボウズが一躍有名になるよ」と言われて。「本当ですか。会社の宣伝になるなら取ろうかな」という邪(よこしま)な思惑がありました(笑)。

山口 そういう入り口だったのですか。

安藤 どんなきっかけでもまずはやってみることだよね。

青野 初めての育休は衝撃的でしたけどね。「これキツイわ」と思いましたもん。育休中はなるべく妻をフリーにさせてあげようと思って、僕がワンオペになる覚悟だったんです。そうしたら、育児は24時間休みがないんですもん。一人はキツイです

山口 育児ってマニュアルでできるものじゃない。デジタルじゃなくて、アナログだものね。泣いていても理由が分からなかったり、急に病気になったりして、何が起こるか分からない。

安藤 だから、育児をするとリスクマネジメント能力がつくんですよ。

山口 あ、そっちへくるか(笑)。

マイナス1歳からのイクカジプロジェクト