夏休み中の8月2日に、ゲーム教育の第一人者である東京大学の藤本徹先生と、現役東大生にして謎解きクリエイターの松丸亮吾さんをパネリストに迎えた「夏休み、子どもとデジタルゲームの上手な付き合い方」と題したイベントが開催されました。ゲームにハマってゲーム以外のことが後回しになるなどといった、「子どもとゲームとの付き合い方」に悩んでいるパパ・ママは必読です。
子どもとデジタルゲームの上手な付き合い方
ゲームのやりすぎによる学力や心身への影響など、子どものゲームとの付き合い方に悩んでいるパパ・ママは多いはず。ゲームとの上手な付き合い方を学ぶイベントの第1部では、藤本先生と松丸さんのパネルディスカッションを通してそんな親の悩みを解消し、ゲームを上手に子どもの成長につなげるコツが伝授されました。
「今日はゲームの良いところに触れていただき、ゲームがお子さんの成長のためになることを体験していただければと思います」と口火を切った藤本先生。デジタルゲームをはじめ、テレビゲームやボードゲーム、トランプ、パズルなどのゲーム全般には、以下の共通する4つの要素があるといいます。
●ゴール:達成するべき目標がある
●ルール:ゴールに到達するためのルールがある
●フィードバック:アクションに対してフィードバックがくる仕組みがある
●自発的参加:自分から参加したくなる仕組みがある
こういった要素がゲームを楽しくさせるのだとか。この要素はいずれも学校にもあるのに、学校の勉強はなぜつまらないのでしょうか。
「ゲームには達成感を演出したり、参加したくなるようなストーリーだったりの世界観が設定されています。そこにチャレンジして失敗もしますが、繰り返しやりたくなるように設定されているのでゲームは楽しいのです。学校の世界観にはそういった設定があまりされていないことが多い」と藤本先生。
そんなゲーム的世界観には、以下のような特徴・仕組みがあり、これが子どもの成長につながると藤本先生は言います。
●達成感の演出・参加を促すストーリー
●チャレンジや失敗を奨励するルール設定
●インタラクティブ(フィードバック等)
●自発的参加
●やっているうちに自然と学べる
「ゲームにはこうした特徴があることから、様々な効果があることが分かっています。まず1つは、交流を促すということ。次に、気分転換になるということ。そして最も大きいのが、学びの入り口になるということです。例えば歴史のゲームをやっているうちに歴史上の人物に関心を持って調べてみようとか、eスポーツなどチームで対戦するゲームをやると、チームで勝つための様々なトレーニングをして、勝つための方法を戦略的に考えるようになります。ホラーゲームにも、プレッシャーの高い状態で緊張や不安に対処し、恐怖という感情をコントロールするという効果がある。ゲームを繰り返しすることで、自然とこうした子どもの力は培われていきます」と藤本先生。
ところで、お子さんのゲーム時間は1日にどれくらいまでがいいのかと悩んでいるパパ・ママも多いはず。子どもの頃からゲームに親しんできたという松丸さんですが、1日にどれくらいゲームをしていたのでしょうか。驚くことに、ゲーム時間の制限はなかったといいます。ただ、小学生の時は勉強を3時間やらないとゲームができない決まりがあったとか。
「僕がゲーム好きで、ゲームを取り上げたら勉強なんて絶対やる気がおきないだろう、というのを母は見越していたんです」と松丸さん。その結果、強制的にやらなければいけないことになった→やるからできるようになった→できるから楽しくなった→楽しいからやるようになった――というサイクルが生まれ、自ら勉強するようになったそう。
これには藤本先生も「松丸さんのお母さんのルールの組み立て方がすごくうまい」と絶賛。松丸さんのように、お子さんの性格や個性、興味に合わせてルールを決めることがゲームと付き合っていくうえで大事だといいます。
「私たちが子どもの時に遊びから得たようなことを、今の子どもたちはゲームの中で体験しながら育っていくという側面もあります。ゲームは危ないなどと思わずに、楽しんでお子さんと親が一緒に成長していけるようなご家庭を運営していけばいいと思います」(藤本さん)