IoTの普及やAIの進化により、時代はまさに第4次産業革命の真っただ中。社会の中で求められるスキルも変わり、これまでの常識が通用しない不確実性の時代を迎えています。不安定で先の読めない時代だからこそ、我が子が自分らしく輝き、幸せな人生を歩むためには、自分自身で考えて生き抜く対応力や個性といった“自分力”、グローバルな世界で活躍できる“真の英語力”が必要となってきます。今、その2つの能力の育成にフォーカスした「バイリンガル幼児園」が、幼児教育の“新スタンダード”として、小さなお子さんを持つパパ・ママの注目を集めています。

幸せな人生を歩むには、最も大切な時期である2~6歳の幼児教育が重要

<b>中室牧子さん</b><br>慶應義塾大学総合政策学部教授<br>1998年慶應義塾大学卒業。米ニューヨーク市のコロンビア大学で博士号を取得(Ph.D.)。日本銀行や世界銀行での実務経験を経て、2013年から現職。専門は教育を経済学的な手法で分析する「教育経済学」
中室牧子さん
慶應義塾大学総合政策学部教授
1998年慶應義塾大学卒業。米ニューヨーク市のコロンビア大学で博士号を取得(Ph.D.)。日本銀行や世界銀行での実務経験を経て、2013年から現職。専門は教育を経済学的な手法で分析する「教育経済学」

 パパ・ママの皆さんは、「我が子には、自分自身で人生を切り拓き、グローバルに活躍して欲しい」と願っていることでしょう。実は、そのために最も重要なのは、2歳から6歳の幼児教育です。

 現に、教育経済学者の中室牧子さんも、その著書『「学力」の経済学』の中で科学的根拠に基づき、幼児教育が大切だと記しています。改めて、なぜ幼児期の教育は重要なのでしょうか。

 「質の高い幼児教育は将来のリターンが高いことを示した研究は少なくありません」と中室さんは言います。教育への投資には相乗効果があり、幼児期に獲得した技術や知識が、次の段階の知識や技術の獲得をより効果的にしていくためだと考えられています。

 「九九ができると因数分解ができるようになるし、因数分解ができると微分積分ができるように、ある知識や技術を習得すると、それを利用して次の新しい知識や技術を獲得していきます。学齢が小さい時に確かな技術や知識を獲得できていると、次の新しい知識や技能を獲得するのに有利になるという考え方です。質の高い幼児教育を受けていると、発達や就学後の学力にプラスの影響があることが示されており、幼児教育の“質”が重要だというのは、教育経済学の定見となりつつあります」(中室さん)

人的資本投資の収益率(概念図)
人的資本投資の収益率(概念図)
縦軸は人的資本の収益率を表し、横軸は子どもの年齢を表します。生まれる前の人的資本への投資は、母親の健康や栄養などに対しての支出を指します。出典:Heckman, J. J., & Krueger, A. B. (2005). Inequality in America: What role for human capital policies. MIT Press Books.

 早い段階から基礎を獲得すれば、その先に伸びていくのも早いというわけです。

年齢に応じたしつけ指導で「非認知能力」を育む

 この最も大切な幼児期に、自身で考え生き抜く対応力である“自分力”と、グローバルに活躍する“真の英語力”を獲得するためのカリキュラムを実施しているのが、バイリンガル幼児園のKids Duo International(KDI)です。

 KDIでは、バイリンガル教育・知育(知能)教育・運動指導・職業体験の他に、自分力を育むためにしつけ教育に力を入れているという特徴があり、年齢に合わせて、段階的な自立を促すことを目的に、ライフスキルが身に付くようカリキュラムが組まれています。

 例えば2歳児なら、その場面に合った挨拶ができる、一人で座って待つことができること。3歳児では、ボタンやホックのある服でも自分で脱ぎ着ができる、ルールを認識し、決まりを守ることができる。4歳児では、絵本の内容を理解して読む、感謝の気持ちを伝えることができる、5歳児なら衣服の着脱・たたむ・ハンガーにかける、自分の意見や感想を人前で自信を持って伝えることができるなどを目標にしています。これらは、先生が一方的に押し付けるのではなく、子どもたちが自主的に、自分たちで声を掛けあいながら、園での生活の中で自然に身に付く環境づくりを大切にしているとのこと。

 こうしたしつけで育まれるのが、人間としての土台となる、幼児教育で最も重要な「非認知能力」なのです。非認知能力とは、IQなどの学力を測る認知能力とは違い、「忍耐力がある」「社会性がある」「意欲的である」といった、人間の気質や性格的な特徴のようなものを指します。

 「1960年代にアメリカで行われた『ペリー幼稚園プログラム』の効果を検証したジェームズ・J・ヘックマン教授の研究によると、質の高い幼児教育によって非認知能力を伸ばすことができると、大人になってからの社会的、経済的状況によい影響があることが示されています」と中室さん。

 1970年代に生まれた約1000人を大人になるまで追跡したニュージーランドの研究でも、幼児期に獲得した非認知能力が大人になってからの成果に影響することが示されています。「この論文では、幼少期に非認知能力の1つである“自制心”が高かった子どもたちは、低かった子どもたちに比べて、32歳時点の健康・経済・社会的な状況がよいことが示されています。具体的には、幼少期に自制心が高かった子どもたちは、大人になってから、収入が高く、借金が少なく、健康状態がよく、犯罪に関与する確率も低いことが分かっています」。

 この研究の注目すべきもう1つのポイントは兄弟姉妹での比較もしているところ。同じ家庭で育った兄弟姉妹だとしても、幼児期に自制心の高かった子どもは大人になってからよい成果を出すことができています。家庭以外の環境も大切だと分かります。

 「非認知能力の中でも、“自制心”や“やり抜く力”は、経済・社会的な成功をもたらすとして注目されています」と中室さん。学力や学歴が高くても、自制心ややり抜く力がなければ、学校を卒業した後の社会で活躍することが難しいことは多くの人が実感するところでもあるでしょう。

 「神戸大学の西村和雄教授らの研究グループによれば、幼児期に非認知能力を向上させるためには、“しつけ”が有効だという研究があります。嘘をついてはいけない、他人に親切にする、ルールを守る、勉強をするといった基本的なモラルをしつけの一環としてきちんと身に付けた人は、大人になった時にそれらを教わらなかった人に比べ、平均年収が86万円高いということが明らかになっています。そのメカニズムとして考えられるのは、しつけを通じて勤勉性や自制心を獲得しているのではということ。学力と同様、非認知能力には親からの遺伝の影響もありますが、家庭や学校などの教育環境も大きいことが分かっています」と質の高い幼児教育の環境が重要であると中室さんは強調しました。

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