豪雨の頻発、台風の巨大化など、地球温暖化を実感する機会が近年、増えています。ジャーナリストで『地球に住めなくなる日 「気候崩壊」の避けられない真実』(NHK出版)の著者であるデイビッド・ウォレス・ウェルズさんは、気候変動による環境への影響に警鐘を鳴らし続けてきた一人。子育て世代がどう考え、どう行動すべきか、話を聞きました。

マラリアやデング熱などが、数十年で北極圏に達する可能性

── 新型コロナウイルスが世界中に広がり、私たちの生活は大きく変化しました。ウェルズさんは著書の中で、蚊が媒介する感染症は今はまだ熱帯地域に限定されているものの、温暖化で熱帯域自体が拡大していることに伴い、感染症もグローバル化していくだろうと書いています。こうしたことは今後も起こるのでしょうか。

デイビッド・ウォレス・ウェルズ氏(以下、ウェルズ) 疫学研究者や気候科学者は、私たち人間が考え方や行動を劇的に変えない限り、将来も感染症のパンデミックは避けられないと考えているでしょう。例えば、蚊が媒介するマラリアやデング熱などの熱帯病は、数十年のうちに北極圏にまで達する可能性があると考えられています。

⽶国のシンクタンク、新⽶国研究機構ナショナル・フェロー。ニューヨーク・マガジン副編集⻑でジャーナリストのデイビッド・ウォレス・ウェルズさん。気候変動による環境への影響に警鐘を鳴らし続けてきた
⽶国のシンクタンク、新⽶国研究機構ナショナル・フェロー。ニューヨーク・マガジン副編集⻑でジャーナリストのデイビッド・ウォレス・ウェルズさん。気候変動による環境への影響に警鐘を鳴らし続けてきた

 2015年に中央アジアのカザフスタンを中心に生息するサイガ・アンテロープというウシ科の動物の成獣が、15万頭を超える大量死をしました。絶滅危惧種として保全策も取られていたにもかかわらずです。直接の死因は2種のバクテリアによる敗血症とされましたが、背景には暑さと湿気、つまり天候の急激な変化などの環境要因により、体内のバクテリアやウイルスの働きが変化したことがあったといいます。

 人間に同じことが起きるとは限りません。でも体内のバクテリアやウイルスの働きがほんの少し変化するだけで、地球上の生物の暮らしが根本的に変わってしまう可能性があることが示されたと思います。その分、公衆衛生(Public Health)の重要性も増しているといえます。