アカペラボーカルグループ「RAG FAIR(ラグフェア)」に所属し、ソロ活動も行うミュージシャンの土屋礼央さん。テレビのワイドショーのコメンテーターやラジオ番組のパーソナリティーなどマルチな才能で活躍する一方、株式投資家という側面も。今春、小学1年生になった一児のパパでもあるDUAL世代の土屋さんに、これまでの投資歴と投資の楽しみ、これから投資を始める人へのアドバイスを伺いました。
※本文中の株主優待情報は土屋さんの経験に基づいたものであり、変更になる可能性があります。

個人向け国債の利息で食べた焼き肉の味

 土屋さんの投資歴は20代の頃、「個人向け国債」からスタートしました。

 「ありがたいことにRAG FAIRが売れてまとまったお金が入ったのですが、物欲があまりなくて使い道がない。でも放っておくのももったいなかったので、預金より利回りが良くて安全な預け先はないものかと探しました。僕は“石橋を叩いて壊して帰る”くらい慎重なもので」(土屋さん、以下同)

 そこで見つけたのが、当時取り扱いが始まって間もなかった「個人向け国債」の5年物だったそうです。

 「国債なら日本が潰れない限りお金は戻ってくる。そう思って投資しました。年間5万円ぐらいの利息が受け取れる計算で、この利息で焼き肉を食べたいなと想像しながら。実際、利息が出たタイミングで焼き肉店に行って食べたら、本当に美味しかった!『コレ、(お金に働いてもらって)タダで食べているんだぜ』と思いながら噛みしめる肉の味は、僕の中で圧倒的な美味しさでした(笑)。だから、儲けたいというより、お金を眠らせずに働いてもらう喜びを得たくて投資を続けるようになりましたね」

 30代になり個人向け国債が満期を迎えると次は仕組預金に預け、3年後に満期を迎えます。

 「その頃、株主優待に興味を持っていたこともあり、2011年に初挑戦しました。何でもきちんと取り組みたいタイプなので、まずは本を読んで勉強しましたよ。『株式投資とはお金を投じることで企業を応援することだ』と知り、儲けるよりそれが大事だなと共感。サッカーのFC東京のサポーターなので出資企業の一つである東京ガスと、生活圏の京王電鉄の株を買ったのが僕の株式投資デビューでした。鉄道好きなので株主優待券を使って電車に乗ってみたいというのもありましたね。株主になる前は電車が遅延するとイライラしていたのに、株主になった途端、乗客の人たちに『僕が応援している会社がご迷惑をおかけして申し訳ない』と思う側に変わりました(笑)」

 次のステップとして考えたのが、「企業の応援+株主優待狙い」。そこで家の近所の商店街に出店していて優待を設けている企業をチェックし、ファミリーレストランや牛丼チェーンなどの株式に投資したそうです。

 「とりあえず牛丼チェーンの吉野家(吉野家ホールディングス)、すき家(ゼンショーホールディングス)、松屋(松屋フーズホールディングス)の3つを全部買いました。理由の一つは牛丼チェーンを利用する人は多いだろうということ。それと値動きのリスクマネジメントとして分散投資が大事ということを学んでいたので、3つ買っておけば業績の悪い銘柄があっても他でカバーできるだろうと思いまして。分散投資の考え方から携帯会社もNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクグループの3銘柄を買いました」

 でも一つミスをしたと土屋さん。

 「松屋の株主優待券が待てど暮らせど届かない。おかしいなと思って調べてみたら、松屋フーズホールディングスじゃなくて、百貨店の松屋の株を買っていました(笑)」。このような似た名前の企業があるので、購入の際は間違えないようによくよく注意が必要です。

マイホームの購入資金に充てるため、株式投資は一度リセット

 そんな失敗もしつつ保有銘柄を増やした土屋さん。アベノミクスの上昇相場にも乗り、資産が増えていったと振り返ります。

 「当時はミュージシャンとしていかがなものか?と思うほど、投資に時間を費やしていました。朝9時から1時間は必ずパソコンに向かって証券会社のサイトで保有銘柄の値動きをチェックしたり、情報収集をしたりしていました。世界情勢のニュースはもちろん、株価や為替への影響が大きいアメリカの雇用統計なんかもすごく気になるようになり、視野が広がったのはよいことだったのですが……」

 株式相場が上昇するにつれ、保有銘柄の値動きの幅も大きくなるように。

 「保有銘柄全体の日々の値動きが万円単位の間は平静でいられました。ところが10万円単位になると上がるのも下がるのもストレスになってきた。ソワソワして落ち着かない。これではメンタルがもたないと判断し、投資をセーブすることにしました」

 ちょうどマイホームを買うタイミングも重なり、資金捻出のために保有銘柄を売却。株式投資を一度リセットしたそう。

 「それまでは本で読んだ知識をもとに、ある程度下がったら損切りするとか、8%値上がりしたら売却するとかいろんな手法を試しました。ロシアやトルコ、南アフリカなどの外国の債券にも手を出しましたが、家を買ってから考え方が変わりました。今はご近所の外食チェーン店など、より身近な優待銘柄への投資が中心になっています。自分にとって心地よい投資とは、生活に密着した銘柄、なかでも家族で食事に行ける優待券が貰える銘柄の株を買うことだと気付いたからです。相場に張り付いて、日々売買ができる人ならもっと儲かる投資もできるでしょう。でも僕にとっては、儲けを追求するより、平静でいられて、楽しめる投資が一番なんです」