社会的には「働き方改革」の概念が浸透した今もなお、霞が関の中央省庁では、古い仕事の仕方が残り、多くの官僚たちが長時間労働を余儀なくされている。その働き方に心を痛め、個人の立場で任意団体「官僚の働き方改革を求める国民の会」を立ち上げ、今年6月に行ったアンケート調査で、官僚とその家族たちから1000を超える切実な声を集めたのが廣田達宣さん。廣田さんの主張に賛同し、官僚の業務効率化に対する協力姿勢を打ち出す国会議員も各党から出てきているなど、活動は少しずつ実を結びつつある。「外部発・霞が関働き方改革」を推進する廣田さんに、思いや狙いを聞いた。

 

 「妻から言われました。『子どもは諦めます。でも、あなたが倒れたら私が頑張るからね。いつ仕事に行けなくなっても大丈夫だから、無理しないで』」

 「平日は、お母さんに学校のことを話したり、一緒に夕ご飯を食べたり、お風呂に入ったりすることができません。もっと一緒に過ごす時間が欲しいです」

 「家族の時間を、普通の家庭のように持ちたいです。官僚やその家族も人間です。健全な家庭を持たなければ、仕事に集中することもできません。夫の同僚は次々と官庁を退職しています」――。

 眺めるだけで胸を締め付けられるような悲痛な叫び。これらの声の主は、霞が関の中央省庁で働く官僚やその家族たちだ。

 今年6月、任意団体「官僚の働き方改革を求める国民の会」が実施したアンケートで集まったコメントには、長時間労働に耐える官僚たちと生活を共にする家族の切実な訴えがあふれている。

 官僚とその家族を対象に、インターネット上で公開したアンケートフォームは、大々的な宣伝を打っていないにもかかわらず人づてに拡散され、回答者数はわずか2週間で1000人を突破

 「直近1年で最も忙しかった月の実際の残業時間」を聞いた設問では、100時間を超える割合が68.5%に及ぶなど、過労死認定基準を超える労働状況が明らかに。また、「直近1年の実際の残業時間」の平均は、人事院公式発表(人事院 平成29年度 国家公務員給与等実態調査)の年366時間の2.6倍である、年963時間に。“霞が関の人事部”である人事院は、今年4月まで「超過勤務命令の上限は年720時間。これを超えるのは大災害対応時などの緊急特例のみ」と定め、720時間を超えないことを努力義務としてきたはずだが、それが常態化している実態が浮き彫りとなった(4月から人事院規則が設定され、「努力義務」から「義務」に)。