世界が注目する、愛媛の16歳・SASUKE君
親のPCで幼い僕の音楽世界が広がり始めた

夏野剛さん(以下敬称略) 今やSASUKE君はテレビや音楽フェスでも活躍し大ブレイクしているね。作曲した楽曲もラップも、そのうえダンスもカッコいいよねぇ。小学生のときにニューヨークのダンス大会で優勝した動画も見たんだよ。

SASUKE君(以下敬称略) ありがとうござます。10歳のときにダンスでニューヨークに行く機会があり、アポロシアターの「アマチュアナイト」という大会の予選に急遽参加することになって、300人の中から合格してステージに立つことができました。大勢の人の前で踊るのはすごく楽しかったです。

夏野 あれは飛び入りだったの? すごい小学生だなぁ。音楽を始めたのはお父さんのPCを触っていたのがきっかけだったんだよね。初めてPCに触ったのはいつ頃だったか覚えている?

SASUKE 幼稚園の頃で多分5歳です。2008年かな。

夏野 タブレットの発売が2010年。そこから、PCはテクノロジーに触れるためではなく、遊べる、音楽が作れる、ユーチューブが見られるなど「目的ありき」で利用されるようになったんだ。SASUKE君はまさに、そんなデジタルネイティブ世代なんだよね。

幼稚園のときの初検索ワードは「DJ」

SASUKE 最初は父に頼んで、ユーチューブを開いてもらっていました。音楽やダンスが大好きだったので、海外のかっこいいダンスの動画やミュージックビデオを見たり聴いたりが面白くて。自分で初めて入力した言葉は「DJ」でした(笑)。

夏野 おお(笑)。キーボードに知っているアルファベットを見つけて押してみたんだね。キーワードを入力するとサムネイルがバーッと現れて関連動画が次々に見つかりアクセスできる。その面白さに目覚めたんだね。

SASUKE そこからすぐに作曲も始めました。おもちゃと同じで、そのPCに入っていた作曲ソフトを「ギターを習うものかも」とか思いながらいじっていたら曲が作れることが分かったんです。ハマってしまって、ゲームが好きな人はゲームに没頭しますよね。それと全く同じで、曲を作るのが楽し過ぎて「ご飯よ」と呼ばれてもずっと熱中してました。

夏野 「褒められるからやる」ではなく、「好き」と出合い、それを突き詰めていたらミュージシャンにつながったってわけだね。理想的な偶然を引き寄せるのもPCやネットの力だね。SASUKE君の曲が、四国から世界に広まったのはSNS(交流サイト)で?

小2の僕と一緒にSNSを楽しむ父の記憶

SASUKE いろんな人に見たり聞いたりしてほしかったけれど年齢も幼いし、家は愛媛だし、ライブをする場がなかったんです。小6で本格的な音楽機材をそろえられたときに覚悟が決まり、「よし、人に見せられるぞ」と感じて、SNSでライブ配信を始めました。最初はなかなか見てもらえなかったんです。でもあるとき原宿で路上ライブをしたら動画をアップしてくれた人がいて思い切りバズって、一気にフォロワーが数千人になりました。SNSの影響力ってすごいんだと実感しました。

夏野 そこから音楽関係の人たちとのつながりもでき、ライブでの活動も増え、高1になったこの夏はプロとしての活躍シーンが一気に広まったみたいだよね。

SASUKE 僕はイラストを描くのも好きで、小2のときに学校でマンガを描いていたら、クラスの何人かの友達が自分も描きたいと集まってきて一緒にマンガを描く会社を作ることにしたんです(笑)。そのとき、父も面白がっていて僕らの会社のフェイスブックを立ち上げてくれました。

    

夏野 SNSを危険視する親も多い。けれどSASUKE君の家庭はデジタル環境を与え、同時に付かず離れず見守っていて、ときに後押ししてくれたんだね。いいご両親だなぁ。来年から小学校でプログラミング教育が義務化され、学校ごとに工夫をしながらデジタル教育の機会を増やすんだ。その内容について不安になっている親御さんも多いと聞くけれど、それよりも、家に一緒にPCに触れるような環境を作ることこそ大事だってことだよね。