いよいよ2020年度から小学生のプログラミング教育が必修化されます。子どもが大人になったときに「コンピューターに使われる側」ではなく、「コンピューターを使って新しい仕事を作る側」に回るためにも、プログラミングや論理思考は必須。でも、こうしたスキルの習得に必要であるにもかかわらず、今の子ども達に圧倒的に足りていないスキルがあります。それが、タイピングやファイルのコピーといった、いわゆる「PCスキル」です。PCスキルの重要性を、PCメーカーを中心とした業界団体WDLC (ウィンドウズ デジタルライフスタイル コンソーシアム)の梅田会長に聞きました。

コンピューターを使って新しい仕事を作る側に回らないと、将来困る

 「2020年度より小学校でのプログラミング教育必修化がはじまり、その後順次中学・高校でプログラミング教育の必修科・拡充が進み、2024年度には、大学入試にプログラミングやPCで試験を受けるCBT方式の導入が検討されています」と教えてくれたのはWDLCの梅田会長。

 「AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)など、新しいテクノロジーがアメリカや中国などの諸外国でどんどん生み出されている中、日本のテクノロジーも再び最先端を目指そうと国主導で動き始めています。そこで、文部科学省では小学校からプログラミング教育を行い、子ども達の論理的な思考力を育むことにしました。さらには、プログラミングに留まらず、PCなどのICTツールを使いこなし、新しいことができる人を育んでいこう、という方向に国自体が進んでいます」

新たなデジタルライフスタイルの提案を目指す業界団体・WDLC会長の梅田さん
新たなデジタルライフスタイルの提案を目指す業界団体・WDLC会長の梅田さん

 しかし、日本の子どものPC所有率や15歳の家庭PCの利用率は、世界に比べて低いのが現状だといいます。

 「PCの所有率や利用率が高い国は、すでに学校でPCを使った授業を行っているから。また、日本はPCよりもスマートフォンを与えているケースが多いのも理由の1つです」

日本の子どものPC所有率は低い。(内閣府「平成25年度 我が国と諸外国の若者の意識に関する調査より」)15歳の家庭PC利用率は47カ国中46位。(OECD「生徒の学習到達度調査」PISA2015より)
日本の子どものPC所有率は低い。(内閣府「平成25年度 我が国と諸外国の若者の意識に関する調査より」)15歳の家庭PC利用率は47カ国中46位。(OECD「生徒の学習到達度調査」PISA2015より)

 「いまや日本の労働生産性は21位、世界競争力ランキングは30位とものすごく下がっています。さらに、日本では少子化が進んでおり、人口が減る、生産性が下がるとなると、国力はどんどん低下しています。そこで、国は、サイバー(仮想)空間とフィジカル(現実)空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会“Society 5.0”を目指しています」

 「“Society 5.0”の世界では、自動車の運転をコンピューターがしたり、AIがいろいろな経済指標や最新のニュースを元に予算策定したり、医者の仕事もコンピューターがするかもしれません。いまの子どもたちが大人になったとき、いまある仕事はなくなると考えた方がいいです。たとえば、我々が子どもの頃は改札に人が立って切符を切っていましたが、いまは自動改札機になっています。産業構造が高度化したことで職がなくなりました。同じことがこの先当然起こるわけで、そのスピードはどんどん早くなっていく。職業の世代交代ももっと早くなるでしょう。そのためには、いまからコンピューターを使って新しい仕事を作る側に回らないと、いまの子ども達が大人になったときに困ってしまいます」