15歳で日本代表に選出され、2度のワールドカップとアトランタオリンピックに出場――という輝かしい実績を誇るサッカープレーヤー。そして、今は「なでしこジャパン」を率いる監督でもある、高倉麻子さん。幼児から親の世代まで、幅広い人たちにサッカーを教えてきた知見をもとに、今、サッカーをしている親子に向けたアドバイスをたっぷり伺いました。

「教える」よりも「導く」姿勢を大事にしている

編集部(以下、――) 高倉監督は「教える」よりも「導く」というスタンスを大事にしていると伺いました。例えば試合で大きい戦略は伝えても、細かい指示までは出さないそうですね。では、もし選手が、監督の想定外のプレーをした場合はどうするのでしょう。

高倉麻子監督(以下、敬称略) そのプレーが正解から外れていなければ認めます。でも、どう考えても正解とは程遠いプレーをしたとしたら、「何でああいうふうにやったの?」と聞いて、話してすり合わせます。「ダメ」とはあまり言いませんが、よっぽどダメなプレーだったら「あれはダメ」と伝えます。例えば、勝手なプレーをしたり、さぼったり、気分で変えてしまうようなプレーは、間違いなくダメです。

 今のサッカーのプレーの動きはとても速くなっているので、皆がハードに動いている中で、走らないでさぼっていることに対しては結構厳しく言います。でも、プレーの選択ミスとか、トライしてエラーしたとかは仕方ないですよね。

 自分のミスは選手が一番分かっていますよ。それをすぐ認められる選手もいるし、認めたがらない選手も、ミスしたことにすら気づいていない選手もいます。

伸びるのは、素直な子

―― 自分のミスに気づいて認める子、認めない子、気づかない子。この3者で一番伸びるのはどの子ですか?

高倉 やはり素直な子は伸びますね。間違いないです。人の話を聞けるというのは大事な能力です。取捨選択は後でするとして、まず聞くことが大事。ひとまず聞いて「あ、そうか」と腑(ふ)に落ちたら取り入れる。腑に落ちなければ「そうか、そういう考えもあるんだな」と思えばいい。(人の話に対して)閉じている子が後になって伸びる場合もあるかもしれませんが、やはりいい選手は人の話を聞けますよね。

 でも、指導者側の伝え方も大事ですよ。仮に「あんなことやって、コノヤロー」なんて言われたら、人間なら誰だって反発心を抱きます。だから、指導者がまずその選手を認めることがまず大事だと思います。