一歩踏み出すとその後の人生がけっこう変わる

自分のポジションや上司の考え方、既に育休取得経験者がいるかどうかなど、いろいろな職場環境があり、育休を取るまでの工夫も多彩だ。興味深いのは、取得後には、職場や家族との関係にいろいろな変化が生まれること。更に4人の育休経験を紹介しよう。

福井開三さん「先輩有志の育休勉強会が後押し。現在は在宅勤務で家族との時間もより大切に」

妻の第二子妊娠がわかった頃、育休取得経験のある男性社員有志が育休勉強会を開催。それを機に育休を検討し始め、繁忙期を外し、子どもが8カ月から10カ月の間に2カ月間育休を取りました。

数年前に山梨に移住したので、横浜へ出社する時に会社付近で泊まることもたびたびでした。しかし育休後、本当にオフィスでするべき業務なのかを考えるようになり、今では基本は在宅勤務に。上司がまとめたタスクリストで、以前は曖昧だった各自の役割が明確になり、皆が主体的に動くようになりました。またマニュアルと資料を関係者がアクセスできる場で共有することで、仕事のアサインのたびに時間を取られることも激減。ぜひ、初めから諦めずに一歩踏み出して、育休取得を検討してみてほしいと思います。

大津慶一郎さん「社会保障、会社の制度と職場の理解のお陰で、産後3週間目から8カ月の育休を取得」

僕が、他の男性社員と比べて長期間の育休を取得できた理由をお話します。まず、社会保障制度の充実。共働きだと各々に育児休業給付金が支給され、かつ社会保険料も免除されるとわかり、経済的不安は払拭できました。そして、勤め先の制度と風土です。配偶者出産休暇の制度や、男性の育休取得目標を掲げるなど、会社が率先して社員を支える仕組みに背中を押されました。

最後に、職場の理解です。育休取得による職場への影響を考え、出産予定日の半年以上前から上司に業務内容と休業中の体制確保について相談し、業務の棚卸しと業務分担の見直しを行いました。今後は多くの男性社員が、積極的に取得できるように、僕の経験を伝えていきたいと思っています。

日比野峻佑さん「子育て経験を通し、子どもを産み育てる妻、そして僕の育休を応援する会社への感謝が芽生えた」

妻が里帰りから戻るタイミングに合わせ、娘が生後2カ月の時期から約1カ月の育休を取得。正直、ひと月以上の取得は前例もなく不安でしたが、早めに上司に相談したところ快諾されました。同僚たちからのフォローも大きく、問題なく取得でき、娘の成長を見守る貴重な時間を過ごすことができました。

育休中は食事、洗濯などの家事を中心に、おむつ替えや寝かしつけを行いました。子育てで精一杯の日々でしたが、育児の喜びと苦労について、妻と共通の認識を持てたことは、その後の生活に大きく影響しています。何よりも、子どもの成長を見守りながら一緒に過ごした時間はかけがえのないものです。今後も更に男性の育休が浸透してほしいと感じています。

上笹 遼さん「出産は楽しみ。でも危険もある。だから育休は必ず取得するつもりだった」

「出産は決して平易なものではない」という不安から、妊婦健診や両親学級には欠かさず付き添ううちに、子育てにより主体的に関わっていきたいと感じ、出産後から1カ月の育休を取得しました。

正直なところ、評価や昇進などキャリアへの影響が気がかりでした。そこで上司である部長、事業部長らに、不安や育児と仕事を両立したい思いを直に伝えて相談。「限られた時間の中で成果を出す人を評価しないわけがない」と返され、とても励まされました。私も必ず、部下にこのようなアドバイスができるマネージャーになりたいと思っています。


※1p-3pで紹介した実例は、「イクメンプロジェクト」の資料から再編集。年齢や役職などは取材時のものです。