性教育は赤ちゃん時代から必要

 プライベートパーツについては赤ちゃん時代からどんな言葉掛けや態度で教えることができるでしょうか。「例えば外出先では『おむつを替えるからこっちに行こうね』と声を掛けながらベビールームへ行くとよいでしょう。おむつを替えるときは『ごめんね、お尻をふかせてね』などと声を掛けてください。着替えも人前ではしないようにして、せざるを得ないときは『大事なところだから隠そうね』と話しかけてタオルなどで覆いましょう」

 「このような親の言葉掛けや態度で、子どもは自分の体の大切な場所は、ほかの人が見たり触ったりしてはいけない、自分からもわざと見せてはいけないということを覚えていきます。どのような行為で自分の人権が侵されるのかを知り、いざというときは抵抗したり、周囲に知らせたりできるようになります。こうして子どもは自分の身を守る考え方と力を身に付けていくのです」

自分の体を守るために教えておきたいこと

〔赤ちゃんのころからできること〕

●プライベートパーツはどこか(外性器、お尻、胸、口)を教える。
おむつ替えや着替え、保湿剤を塗るときなどに教えるとよい。
●プライベートパーツは、自分以外の人が勝手に見たり触ったりしてはいけないと教える。言葉掛けや行動で教えていく。



〔言葉が分かるようになったら追加したいこと〕

●プライベートパーツを見られたり触られたりしたら、嫌だと抵抗していい。
●もしも被害に遭ってもそれは自分のせいではない。
●嫌だと思ったことは、親に伝える。

家庭、学校での教育が大切

 今回のような年長者から子どもへの性犯罪はなぜ起きてしまうのでしょうか。村瀬さんは、性の権利やプライベートパーツの扱い方を学ぶ機会が、学校でも家庭でもほとんどないことが原因の一つだと話します。「これは教育の課題でもあります。お父さんやお母さんはわが子が赤ちゃんのときから自分や他人のプライベートパーツを大切にするということを繰り返し伝えてください

村瀬 幸浩(むらせ ゆきひろ)

氏名(しめい) 東京教育大学(現・筑波大学)卒業。東京・和光高等学校に保健体育科教諭として25年間勤務。その後、1989年より一橋大学でセクソロジーを講義するほか、津田塾大学、東京女子大学でも非常勤講師を務めた。1982年、性教育の実践研究団体“人間と性”教育研究協議会を立ち上げた。ジェンダーフリーや「性の自己決定権」、「性と人間関係」、「家庭で育つ性」などのテーマで活動している。日本思春期学会名誉会員。近著に『おうち性教育はじめます 一番やさしい! 防犯・SEX・命の伝え方』(共著・KADOKAWA)がある。

取材・文/関川香織 イメージ写真/鈴木愛子