親でもお世話以外で子どものお尻に触れてはいけない

 大人がスキンシップのつもりで子どもの体に触れるとき、気をつけなければいけないのがプライベートパーツだと村瀬さんは話します。

 プライベートパーツとは、外性器、お尻、胸、口のこと。「おむつ替えなどのお世話や病気の看護などで必要なとき以外は、触れてはいけません。プライベートパーツにふざけて触ったり、触ったことをかわいがっていることにすり替えたりするのは、子どもの人権を侵害することです」と村瀬さん。このことは、赤ちゃんのときから子どもに言葉や行動で教えていくとよいそうです。

 わが子のお尻を「ぷりぷりしてかわいいね」と言いながらなでるなどしてかわいがるのもよくないのだそう。「もしそれを他人がしたら、親としては違和感があるのではないでしょうか。それはお尻がプライベートなところだからです。このようなことをしてはいけないのは、他人はもちろん、親も同様です」

 村瀬さんがこう話すと、「親でもですか?」と必ず聞かれるそうです。

 「そう、親でもです。なぜいけないのか説明しましょう。子どもは、大好きなママやパパがニコニコしながら自分のお尻を触ってくれば、愛されていると感じます。たしかにそれは愛しているから、かわいいと思うからこそでしょう。でも、子どもは『こんなふうに触られるのはかわいがられているからだ』と覚えてしまうのです」

 ここで危険なのは、「自分に好意を持っている人からは、そうされてもいい」と子どもが思うようになることだと村瀬さん。「幼い子どもは、自分に好意を持っている人は、皆、同じように自分をかわいがるものだと思っています。相手によって触ってもいい部分が違う、ということはまだ分かりません。となると『親がお尻を触るのは、自分をかわいがっているから』と覚えた子どもは、悪意を持った他人がお尻を触っても『自分をかわいがっているから』と誤解してしまう可能性もあります。そのために、恐怖も加わって拒否できず受け入れてしまい、親に報告しないということも起こり得ます」

 本能的に嫌だと感じても「嫌だと感じる自分が悪いのでは」と思ってしまうこともあるそうです。

 プライベートパーツを自分以外の人に触らせないという考え方は、後述するような方法で、赤ちゃんのうちから言葉や行動で教えていくとよいそうです。

 その上で、誰かに嫌なことをされたら、かわいがってくれる相手だとしても、その場で嫌だと言ってよいこと、大きな声を出して周りに助けを求めること、親に報告することも教えていきましょう

 被害を受けたときに、親に怒られると思って言えない子どももいます。「子どもへの性加害は、すべて年長者に非があります。親は『もしも見られたり、触られたりしてもあなたは全く悪くない。ママ/パパがあなたを怒ることはないから、何かあったらすぐに話してほしい』と教えてあげてください。子どもの心の傷を少しでも軽くするために、つらいことをかかえ込まず、打ち明けられる親子関係を築いておくことが大切です