自分の子、地域の子、みんな一緒に“あほな遊び”をさせてあげたい

―― 最後に、日経DUAL読者に何かできることがあれば、教えてください。

鈴木 今回の事件を「遠いところでひどい人が起こしたこと」――、つまり他人事だと思わないでください。

 今、多くの親は追い立てられています。自分が社会的地位を得ている高学歴な親は自分の子も同じようにと思い、子にプレッシャーをかける。また自分に学歴がなく現在の生活に苦労している親は、「自分の子こそは学歴をつけさせ社会で生き抜いていけるように」と、やはり子にプレッシャーをかけます。

 この社会で自立していくためには、就学前から「ひらがな」を習わせ、「算数を」「英語を」と、他の子たちに遅れないようにさせなければと焦る。塾に入れたら入れたで塾のクラスのアップダウンで親が歓喜したり意気消沈したりする。

 その結果、受験勝者となり進学校に入り、東大等有名大学に入って結果を出した子やその親を英雄視してメディアがそれをもてはやす。そんな人たちは周囲にいませんか。実は、皆さん自身の中にもそんな気持ちが存在していませんか?

 結愛ちゃんの保護者と私たちはそんなに遠く離れた場所にいたのでしょうか。私はたくさんの子や保護者と出会い話してきて、結愛ちゃんの保護者を責める気持ちよりも、社会のシステムと私たち一人ひとりの意識を変えることに目が向いています。

 子どもの権利・主体性を真の意味で尊重し、子どもが生きているだけで本当に「ありがたい」ことだと思って、子どもと接している人は果たしてどれくらいいるのでしょうか? 支配したい気持ちに気付いたら、結愛ちゃんを思い出して、自分が子どもに向かう気持ちを修正していくことができればと思います。

 自分の子どもだけでなく他人の子どもも、同じように、安全で安心して、生きられる世の中を作っていきませんか? 結愛ちゃんは遊びを禁じられ、「あそぶってあほみたいだから やめるからもうぜったいぜったいやらないからね ぜったいやくそくします」と書きました。

 自分の子どもにも、地域の子どもにも、声をかけて、“あほな遊び”を、みんな一緒にさせてあげたい。そう思いませんか?

 実は、アンテナを立てれば、目を見開けば、学習支援や食事支援が必要な子、安全な居場所がなく睡眠等が十分とれない環境に置かれている子は、あなたの身の回りにたくさんいます。そこに予算をつぎ込むことは、公正なのだという意識を持ち、その政策に「YES」と言いませんか。そのためには、「一部、自分たちのための予算を削ってもよいから、今回のような悲しいケースを減らし、なくすために予算を使って」と、皆さんにも声を上げてほしいと思っています。