個人の情報が売買されるダークウェブ

「ダークウェブ」という言葉を聞いたことはあるだろうか。ウェブサイトの一種ながら、通常の検索で見つけることのできない闇のウェブを指す。ウェブ全体を氷山に例えると、誰もが検索・閲覧できる「サーフェイスウェブ」は、いわば海の上に見えている氷山の一角。その水面下は「ディープウェブ」。認証情報が必要な会員制ウェブサイトなど、一般には公開されてないサイトはここにある。そして、その下層に、特殊なブラウザでのみ閲覧できる「ダークウェブ」が存在する。本来は米国海軍が匿名性を確保することで情報通信の秘匿性を確保する諜報活動で利用するために開発された技術で構築され、現在はその匿名性ゆえに、個人情報売買の格好の場となり、闇取引の売人たちが暗躍している。

1年で日本人500万人の個人情報が盗まれている

ダークウェブで日々売買されるのは、違法薬物や偽札、偽造パスポートの他、メールアドレスやクレジットカード情報、金融機関の口座情報など、個人の特定に欠かせない数々の重要事項。その多くは、個人や企業からネットを介して盗まれたものだ。2019年にサイバー犯罪の被害に遭ったことがある日本人は2460万人に上り、このうち約500万人(前年比200%強)が個人情報を盗難されている(※ノートンライフロック調べ)。プライベートのみならず、これからは個人のPCで仕事上の資料を扱うケースも増え、誰もが主体的な安全対策を考える必要性も高まる。

あなたの情報の漏えいは私用PCから? 利用サイトから?

ノートンライフロック・マーケティング部の北條亜希子さんは「用心していてもネット社会では、様々な“抜け穴”から情報が盗難されると覚悟してほしい」という。個人がもし万全に個人情報を扱っていたとしても、情報を預けた企業がサイバー攻撃にあう可能性がある。「例えば、10年以上前に一度だけ利用した通販サイトにも、顧客情報データは残っています。登録時、手書きだった情報も企業内ではデータベース化され、ハッキングの対象になります」。流出元は、これまでに利用登録したサービスの数だけあり、パスワードの使い回しや、SNSのIDを利用するログインなどで、被害の広がる可能性は高くなる。

デジタル時代にまず親子で交わすべき会話はコレ

2人の男の子の母でもある北條さんは、「ラクに安全・安心を得られるサービスでなければ、忙しい子育て世帯に勧められません」と話す
2人の男の子の母でもある北條さんは、「ラクに安全・安心を得られるサービスでなければ、忙しい子育て世帯に勧められません」と話す

新型コロナウイルスによる外出自粛を経て、親も子もインターネットなしで仕事や学習ができない時代が一気にスタートした。そのメリットを賢く利用するには、まずダークウェブの怖さを家庭で共有しよう。小学生と中学生の息子さんがいる北條さんは、この時期にぜひ、子どもをネット上の危険から守るための家庭での話し合いの機会を持ってほしいとを言う。

なぜパスワードを使い回してはいけないのか、なぜ知らないアドレスからのメールを開くと危険なのか、なぜアプリを無闇にダウンロードしてはいけないのか、なぜ街中のフリーWi-Fiの利用を控えた方がいいのか――いずれも、「不正に個人情報が盗まれ、ダークウェブで悪用されることを避けるため」と、親子で再認識しよう。