大学附属の中高一貫校として、ユニークな高大連携教育を進めている獨協埼玉中学校・高等学校。のびのびとした学びに特長があり、中学校では多彩な体験活動を通して興味・関心を引き出しておいて、高校でそれをさらに伸ばして将来のキャリアへとつなげる教育を展開している。6年間の教育の特色について教頭の堀口千秋先生に聞いた。

全科目を学ぶなかで、「武器」となる分野を発見していく

 埼玉県東部地域では、大学附属は同校のみだ。その特色を生かし、同校ではやみくもに進学実績だけを追い求めることはしていない。

 「中高の6年間をどのように組み立てるかが、中高一貫校に求められる最大の命題であり、本校では、生徒が自分の強みを発見し、育てる時間にしたいと考えています。生徒には、部活も学校行事もきちんとこなして、大学受験に向かっていってほしい。そのときに強みとなるのが、『武器(となるような得意科目・分野)』と『豊かな友人関係』の2つだと考えています」と堀口先生は語る。

 「武器」をつくるため、中学では無理な前倒しで先に進める方法はとらないが、分野や単元によっては、高校内容を積極的に取り入れる先取りして、その分野や単元の本質的な理解へとつなげている。高2で文理に分かれるが、高2まで全員が全科目を履修する。時間数は文系・理系で多少異なるが、すべての科目を学ぶことを通して、「武器」となる得意科目をしっかりと認識し、自ら進んで学ぶことを促している。同校の最大のコンセプトともいえる。

 なお、「豊かな人間関係」は、大学受験をはじめ、苦しいときの支えになってくれる。これを培ってくれるのが、部活や学校行事だ。他者との違いを認識し、自分の強みがどこにあり、どんな活動なら、チームに貢献できるのかなどを、こうした活動を通して理解していくことができるからだ。だから同校では、高校でも部活を奨励し、学校行事もきちんと行っている。

「帰納法的手法」により、知識の確実な定着を図る

 中学の学びでは、「帰納法的手法」を意識している。結論を先に教えるのではなく、たくさんの具体的な例に触れながら、生徒自身が結論を導いていく力を身につけられるようしている。その好例が中学の総合学習だ。

田植えの様子
田植えの様子

 中1の総合学習は「稲作」だ。正門前に田んぼを借り、毎年、田植えから、観察会、施肥、除草、稲刈り、収穫、わら縄編みまでを行っている。イネの成長や水田の生物の観察のほか、日本の農業をめぐる状況についても考える、教科横断型の教育を展開している。

 「水のなかで動いているミジンコを見ても、生徒はミジンコだと分かりません。教科書の図ではすぐに分かるのに、実物とリンクしていないのです。ですから、採取して顕微鏡で観察し、スケッチさせて、ミジンコであることを確認させたりしています。時間はかかりますが、本物に触れることで得た知識は、しっかりと定着します」(堀口先生)

 総合学習は、中2では「職業体験」、中3では「福祉・介護体験」へと発展し、高1の「環境学習」、高2の「平和学習」、高3の「進路学習」へとつなげている。いずれも実世界や実物に触れることで、現実の世界をしっかりと認識し、そのなかで自分の果たす役割や将来のキャリアを考えていくことになる。

 同校は週6日制だが、中学では週3日は朝学習で小テストを行い、残りの3日は朝読書を行っている。小テストで一定の基準に達しないと強制補習が課され、週4日の部活動への参加が制限される。苦手科目をつくらずに高校へ進学させるための仕組みだ。逆に、勉強が進んでいる生徒に対しては、レベル別の講習を用意し、力を伸ばしている。

国内留学体験
国内留学体験

語学教育と海外研修により、国際的な視野を育成

 国際的な視野の獲得に向けた教育活動にも力を入れている。英語の授業では、日本人教員とネイティブ教員の授業を連携させ、語学だけでなく英語圏の文化やものの考え方などを教えているほか、上級者向けの英語講習EAPでは、ネイティブ教員指導の元、英語でのディスカッション指導も行っている。中2では、「国内留学体験」として河口湖畔のホテルで、アメリカンサマーキャンプを行い、生徒5~6人にネイティブ講師が1人ついて、2泊3日の英語漬けの生活を行う機会を用意しているし、高1では、英語のスピーチコンテストも行っている。

 国際交流の機会も豊富だ。中学ではニュージーランドの姉妹校との間で、ホームステイによる相互交流を開催しているほか、高校では、オートストラリアやドイツの姉妹校で2週間の語学研修を行っており、アメリカ・サンフランシスコは3週間の語学研究を実施している。

獨協コース
獨協コース

大学教授の指導で卒業論文を執筆する「獨協コース」

 同校は、厳密な意味では大学附属ではなく、獨協大学とは併設関係にある。希望すれば全員が獨協大学に進めるが、他大学を目指す生徒も多い。現在、獨協大学への進学は2割程度で、国公立早慶上理に30~40名程度、MARCHクラスに100名以上が進学している状況だ。

 獨協大学への進学には①指定校推薦、②「獨協コース」、③併願推薦の3ルートがあるが、ユニークなのは「獨協コース」だ。高3進級時に学部・学科を指定して申請することが必要で、成績条件をクリアして「獨協コース」に所属すると、高3は通常の授業が半減し、残りの時間で卒業論文の執筆や、大学からの推薦図書の読書などに力を入れることになる。卒業論文は、獨協大学の教授から直接指導を受けることができ、優秀な論文は、「優秀論文集」として製本される。推薦図書も最低30冊以上の読破が課せられるほか、文化祭ではギリシャ悲劇など古代演劇の上演にも参加することになる。

書店のような図書館
書店のような図書館

 「進学する学部・学科が決まっているからこそ、大学での学びにつながる教育が可能なのです。高大連携教育の最も進んだ形の1つだと自負しています」(堀口先生)

堀口千秋 教頭先生
堀口千秋 教頭先生

 なお、併願推薦は、獨協大学への入学権を保持したまま、他大学を受験できるシステムだ。成績基準があり、大学が実施する英語のテストと面接で合格する必要があるが、国際系や語学系の学部を目指す生徒は、このルートを使って難関大学に挑戦している。

 首都圏の大学の定員厳格化の影響で、獨協大学のレベルは年々上昇している。同校では、併設校の強みを生かし、獨協大学とのさらなる連携強化を図りたいとしており、今後は、獨協大学への進学と難関大学への進学が、同校出身者の進路の柱になっていくだろう。

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