2017年に創立40周年を迎え「NEW江戸取」として改革を進める江戸川取手中・高等学校。19年には附属小学校の一期生が中学に進学した。小中校と12年の教育体制が整い、学園がめざす世界型人材育成への一貫した取り組みが進められている。

 同校は1978年の創立以来、「規律ある進学校」として心力、学力、体力を育てる教育に臨んできた。竹澤賢司校長は、その理念について次のように話す。 「日本人には、先人たちから受け継がれてきた謙譲心、忍耐力、公共心といった美徳があります。その美徳を継ぎ人間としての芯を持つことで本当の優しさ、たくましさが磨かれ、初志を貫く強い精神力が育つのです」

学校長の竹澤賢司先生。同校では現在、様々な改革が進行中

 人間教育の一環として中学1年、高校1年の生徒を対象に校長・副校長・学年部長の先生方が講話を行っている。竹澤校長は福澤諭吉や野口英世など、偉人のエピソードを通じて人生をいかに生きるべきか、生徒に伝えている。この心の教育の成果は、形となってもあらわれている。シリア難民のドキュメンタリーに感銘を受けた女子生徒が、「高校生でもできる国際協力への一歩」をテーマに、茨城県高等学校国際教育弁論大会に出場。最高位の茨城県知事賞を受賞した。

 2018年は創立40周年を契機に、大胆な改革を実施した。そのひとつが授業改革で、50分授業を45分に短縮。集中して行い、生徒主体の質の高い授業をめざす。また教員の働き方改革にも取り組み、フレックスタイムやノー残業デーなども導入した。

 「教員が生き生きしていないと、生徒がわくわくするような良い授業はできません。そのためには教員にも自由な時間や、自ら学ぶための時間も必要です。先生方と話し合い、一丸となって生徒に良い授業を提供していこうという方針で一致しました」(竹澤校長)

 授業を短縮したことで放課後に余裕が生まれ、導入したのが「アフタースクール」だ。150種以上の講座から自分の学びたい講座を選択できるようになっており、勉強を深めたい生徒のためには、教員による学習系の講座も100以上設定されている。教養分野では、お茶の水女子大学湾岸生物教育センターでの「海の生物体験」や東京大学の「高校生のための金曜特別講座」、筑波大学医療講座などの高大連携型講座、そのほかにも模擬国連、理数融合実験、病院見学ツアー、1日医師体験など、授業だけでは体験できない学びが用意されている。卒業生の協力もあり、東大に進学した学生が東大ツアーのガイドを引き受けたり、病院見学では、卒業生の医師が体験談を話したりしている。

校舎外観。2020年3月には40周年事業のSakura Arenaも完成する

企業とコラボで製品化 教員の職場改革も進む

 このアフタースクールをきっかけに、企業とのコラボレーションでスポーツウェア「SUKETTO」を考案した生徒もいる。生徒の視点から「下着が透けない白いウェア」の開発に着手。白色顔料などを生地に加えるなど工夫して、ウェアを開発した。同製品は、革新的なアイデアを競う「Mono-Coto Innovation2017」の中高生の部で、見事3位に入賞した。

 「もちろん、基礎的な学習は必要です。過去のいろいろな人が積み上げてきた知識の集大成が学問、それを踏まえたえで、社会に出たときに活躍できる実践的なスキルを身に付けさせたいと考えました」(竹澤校長)

 改革のもうひとつの柱が、探究型学習「Sustainable Development Goals(SDGs)」プロジェクトの導入だ。SDGsとは2015年の国連サミットで採択された持続可能な社会をめざす世界規模の課題解決テーマで、貧困や飢餓の撲滅など17の目標を掲げている。初めにそれぞれのテーマについて専門家によるガイダンスを実施し、その後各人がテーマを決めて課題解決に1年間取り組む。

 高2の「えどとりフードドライブ」のメンバーは、食品ロスに着目し、各家庭の不要な食品を集めるキャンペーンを行った。最終的に330キロの食品を集めて、フードバンク茨城を経由し子ども食堂などに無償提供。そのほか大学や企業などにも協力を依頼し、森林の伐採、地域の活性化などに取り組んだグループも。

 「社会に出ると、解のない問題にぶつかることも多い。その時に率先してみんなの意見をまとめ、行動する人間になってほしい。学年末に集大成として行われたプレゼン大会を見たのですが、どのグループも問題意識を持ってよくやっていました。たいしたものだと思います」(竹澤校長)

附属小の一期生が入学

 2014年に開校した附属小学校は、当時小学1、2年の2学年でスタートした。小学校でも学園全体の理念としての心力、学力、体力のバランスとれた教育を掲げており、道徳の時間を重視している。また7つの習慣を取り入れて、リーダーとしての資質を育てているのも特徴だ。中高同様アフタースクールとして26の講座が用意されている。英語の授業は小学1年から取り組んでおり、中学に進学した63人のなかには、英検の2級の資格をもつスキルの高い生徒も複数いるという。内部生の進学で今年の中学入試は難化した。来年は90人弱が進学する予定で、さらに狭き門となりそうだ。

「小学校からの一貫生は、中学から入学する生徒にとっても良い刺激になることでしょう。核となる生徒が多いことで、集団の底上げも期待されます」

 中学入試でも英語型入試や帰国生入試を導入しており、同校がめざすグローバル教育に弾みがつきそうだ。2013年から実施している「アメリカ・アカデミックツアー」はハーバード大学で卒業生の講演を聴いたり、マサチューセッツ工科大学のキャンパスツアーや国連本部の見学、ワシントンDCでの研修会などを行ったりしている。国立航空宇宙博物館では広島に原爆を投下したB-29(エノラ・ゲイ)も見学する。高校生対象のカナダ研修旅行やオーストラリア短期留学は語学だけではなく、異文化を体験し広い視野を持つようになるという。火~金の昼休みにはコミュニティーホールでEnglish Cafeが開催され、ネイティブの先生と気軽に英会話を楽しんでいる。

アメリカ・アカデミックツアーで訪れるハーバード大学。 現地を実際に訪れ将来の自分を思い描くことで「世界に挑む」想いを生徒たちは 育む
獨協医科大学では現役医師による講演と質疑応答に臨んだ

 今春の大学実績は、東京大学5人を含め国公立大学へ118人が合格した。東大へは3年連続で推薦入試合格者を輩出。医学部医学科へは77人と、開校以来の好成績を上げている。医学部の合格者は年々増加しており、コース制導入の成果が伺える。医学部志望生対象の医科コースには、独自教科「メディカルサイエンス」が週に1時間導入されており、「医療問題」「医療統計」「科学英語」「科学実験」の4分野を、学年の枠を超えて学んでいる。そのほか、現役医師の体験談を聞く「医科講話」、医療倫理を学ぶ「医科教養講座」などを実施して医師としての資質を育てている。2016年からは中学を「医科ジュニアコース」「東大ジュニアコース」「難関大ジュニアコース」の3コース制にし、早い段階から目標を明確にさせた。

自治医科大学でのメディカル研修の様子。研修医や医学 生が実際に使う器具に触れての実のある研修だ

「改革のいちばんの成果は、生徒が主体的に学ぶ姿勢を身に付けてきたこと。これからも生徒に多様な機会を提供し、生徒の夢を実現する学校でありたいですね」(竹澤校長)

獨協医科大学見学ツアーではドクターヘリに ついても学んだ

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