川崎市多摩区の登戸第一公園付近の路上で起きた「川崎殺傷事件」。大人の男性と、カリタス小学校のスクールバスを待っていた小学生が殺害され、他にも多くの方が被害に遭いました。

小さなお子さんのいるDUAL読者にとって、この事件は決して対岸の火事ではありません。子どもを守るために親や社会に何ができるのか。今回は地域の安全や犯罪予防を研究する立正大学教授の小宮信夫さんにこの事件を分析してもらいました。

犯罪予防のプロが事件現場を歩いて分かったこと

 私が実際に犯行現場へ出向き、真っ先に目に飛び込んできたのはあふれんばかりの献花でした。これまでさまざまな現場へ出向きましたが、あれほどの数の献花を見たことがありません。その様子だけでも、川崎殺傷事件が社会に与えたインパクトがいかに大きかったのかが分かります。

2019年6月3日、神奈川県川崎市の登戸第一公園付近で起きた事件現場にて。 多くの花束が供えられていた
2019年6月3日、神奈川県川崎市の登戸第一公園付近で起きた事件現場にて。 多くの花束が供えられていた

 岩崎隆一容疑者の足取りを辿ってみたところ、事件当日の彼の思考が少しずつ見えてきました。犯罪者の思考パターンを知ることは、こうした事件を予防するのに大変役立ちます。これから詳しく説明していきたいと思います。

 事件当日、まず岩崎容疑者は川崎市の登戸駅から出ると、すぐに児童たちのいる現場に向かうのではなく、線路沿いの道を歩いていました。なぜ、その道を歩いていたのか?

容疑者が犯行前に歩いた線路沿いの道。 ここで容疑者は数人の児童を目にしたはずだが、犯行には至らなかった
容疑者が犯行前に歩いた線路沿いの道。 ここで容疑者は数人の児童を目にしたはずだが、犯行には至らなかった