「子ども」「子育て」を題材にした作品を多数発表、日経DUAL上でも、2017年6月から18回に渡り、共働き子育て中の女性たちを描いた連載小説「さしすせその女たち」を執筆し、多くの読者の心をつかんだ小説家の梛月美智子さん。2人の男の子を育てるワーキングマザーでもある椰月さんにインタビュー。【下編】は「共働き夫」に関する話題から端を発し、意識の向け方を変えることの効用などについてもお話しいただきました。

家事の主導権は女性が握らざるを得ないのが現状

日経DUAL編集部(以下、――) ご長男の中学受験「不合格」を振り返り、心情を語っていただいた【上編】は、中学受験に挑む多くの共働き親の皆さんの心に刺さったようで、SNS等で数多くのリツイートや共有をいただきました。

 続く【下編】のテーマは、「夫」について。共働きという働き方が世間の主流になりつつある中、夫婦の家事・育児分担の状況はどのように変化してきたと見ていますか。

椰月美智子さん(以下、敬称略) 「ワンオペ育児」という言葉もだいぶ浸透してきて、社会課題として認識する人も増えてきたのは進歩だとは思いますが、現状はまだまだ。私自身も共働きで、夫との家事分担について試行錯誤する中で感じてきたのは、やっぱり家事の主導権は女性が握らざるを得ないということです。

 洗濯や食器洗いといった「単発で完結するルーティンの家事」であれば男性も取り組みやすいと思いますが、例えば、子どもの成長に合わせて服や靴や上履きを買い換えるとか、衣替え、プリントの記載に従って学校の持ち物を用意する、習い事の調整、歯医者や病院への通院、といった「日々新たに発生する突発的な家事」の担い手には、夫たちはなかなかなってくれません。子どもの学校での保護者活動などもそうですよね。また、一週間、一カ月、一年単位での学校行事や家庭の用事などを把握して手配調整することも、女性が主となって動いていると思います。

 本当に公平に分担するなら、「突発系の家事はこっちがやるから、ルーティンの家事はすべてやってください」くらいでないと、フィフティーフィフティーにはならないと思います。

―― 夫が家事を自分から進んでやるタイプでないと、家事分担は本当に大変ですよね。それで悩んでいる女性はたくさんいます。

椰月 私もまさにその一人でした。一般論としては「夫は褒めて伸ばし、家事や育児がちゃんとできたときは『ありがとう』を忘れずに」といわれますし、日経DUALでもそんな記事を読んだことがあるのですが、私はそれがどうしてもできないんです。「夫婦として当然のことなのに、なんでそこまでこっちが折れないといけないの」と反発心が湧いて、力ずくで「やりなさいよ!」と迫っちゃう(笑)。

 こっちは仕事をしているのに、寝転んでテレビを見ている夫。「掃除機をかけて」と言っているのに、動こうとしない夫を見るだけでイライラして、やるまで仁王立ちして見張るようなこともありましたが、いくら私が激高しても一向に夫は変わらない。「掃除機をかけたいのなら、自分がかければいいじゃないか」と開き直る姿に、また怒り、消耗を繰り返していました。

「共働き家庭にとって、夫婦間の家事の分担問題は本当に深刻ですね」と話す椰月美智子さん
「共働き家庭にとって、夫婦間の家事の分担問題は本当に深刻ですね」と話す椰月美智子さん

―― 過去形ですね。今は違うということでしょうか。

椰月 そうなんです。あることを試してみたら、あまり気にならなくなり、夫の行動も変わってきたように感じています。

―― いったい、どんなことを?