育休を取得した会社員が復帰翌日に転勤を言い渡され、有給休暇の消化なども認められずに退職に追い込まれた件が話題となっている。折しも、自民党の有志が「男性育休の義務化」を目指す議連を発足したタイミングでもあり、「パパ育休」のあり方が国民的な議論になってきた。

男性の育休取得はどうあるべきなのか、今回のケースのように急な転勤を言い渡されたとき、どのような手立てが取り得るのか。専門家に話を聞いた。

「信じられない」と憤慨するツイートから始まった

 「信じられない。夫、育休明け2日目で上司に呼ばれ、来月付で関西転勤と。先週社宅から建てたばかりの新居に引越したばかり、上の息子はやっと入った保育園の慣らし保育2週目で、下の子は来月入園決まっていて、同時に私は都内の正社員の仕事に復帰予定。何もかもあり得ない。」

 こんなツイート(原文ママ)が投下されたのは4月23日のことだった。大手化学メーカーのカネカに勤める投稿者の夫が、約1カ月の育休を終え、復帰した翌日に、上司から関西への異動を通告されたという。時期の延期や退職にあたっての有給休暇の取得なども一切認められなかったといい、夫は会社が一方的に指定した5月31日に退職した。

 妻と夫は「日経ビジネス」の単独インタビューに応じ、「こうした問題はたくさんの人に知ってもらわないと駄目なのではないか」と思い、会社名の特定につながる投稿をしたと話している(「育休復帰、即転勤」で炎上、カネカ元社員と妻を直撃)。

 この件が話題となった直後の6月4日、厚生労働省が雇用均等基本調査の2018年度の速報値を発表した。それによると、男性の育児休業取得率は6.16%だった。前年の5.14%から1.02ポイント増となり、過去最高の数字ではあるのだが、政府は「2020年までに13%」を目標としており、このままでは到底届かないことは明らかだ。そして翌5日には自民党の有志が「男性の育休『義務化』を目指す議員連盟」を発足した。

 カネカは6月6日、「当社の対応に問題はないことを確認」と公式見解を発表。「転勤の内示は育休に対する見せしめではなく、当社が退職日を指定した事実はない」とした。夫の退職後の炎上騒ぎ以降、「男性の育休」をめぐるホットなニュースが続く1週間となった。

 男性に育休を取得させようという政府や世の中の動きと対照的に、子育てサポート企業として認定された「くるみんマーク」を取得しているカネカのような企業ですら、男性の育児参加に前向きではないという現実。それを裏付けるかのような、伸び悩む男性の育児休業取得率。なぜこうなってしまうのだろうか。

 日本全国で数多くのパパ&ママ、プレパパ&プレママに子育てと仕事の両立について講演しているNPO法人ファザーリング・ジャパン(FJ)理事の林田香織さんは、「育休制度自体に関して、理解が進んでいないことが問題」と語る。育児休業制度は労働者に認められた権利であり、男女にかかわらず取得することができる国の制度なのだが、会社が認めなければ、あるいは会社に育休の制度がなければ取得できないと勘違いしている人が多いという(参考記事「育休取得はパパが持つ権利 まずは制度を知ろう」)。