有休取得を認められなかったら「それは解雇ですか?」と返そう

 しかし、組織で働く以上、急な転勤などの人事は避けられない場面もあるだろう。日経DUAL読者の共働きママやパパからすれば、まさに「明日はわが身」でもある。こうした事態に直面したとき、どんな対処法が考えられるのだろうか。

 「転勤を言い渡された場合、雇用契約にその旨も明記されているのであれば、基本的には拒否できません。しかしどうしても困るという場合は、まずは労働組合に相談してみてください。それでも難しければ、労働基準監督署への相談や労働局に助言・指導を求める、紛争調整委員会のあっせん手続きを利用するといった手段があります。今回のケースでも、東京労働局から仲裁に入るという提案があったようですが、ご夫婦は断られたようですね。そこまでして残りたい会社なのかどうかという葛藤があったのかもしれません。

 退職する決断をするのなら、退職金などを受け取るのは当然ですが、有給休暇の取得も労働者の権利です。会社側から『〇日に辞めてくれ』と言われても、『分かりました』と安易に了承しないようにしましょう。了承してしまうと退職日について合意したとみなされます。

 それでも有休取得もできない退職日を指定されたら、『それは解雇ということですか?』と返してみるといいかもしれません。事実、会社が一方的に退職日を指定できるのは解雇の場合だけですから」

 林田さんは、「自分たち家族にとって何が一番大切なのかを考えてほしい」と話す。

 「家族が一緒にいることが一番大切なら、転職や退職も選択肢の一つになるでしょう。生活費や将来の資金のために、期間限定で単身赴任を選択する場合もあるかもしれません。転勤というのは何も悪いことばかりではなくて、最近は妻が海外赴任になって、夫が退職もしくは休職をして子どもと共についていくというケースも増えています。これも転勤ですが、家族にとってはいい機会になったと捉える人は少なくありません。

 まずは、取り得る選択肢を整理し、家族にとって何が一番大切なのかを話し合う。そうして決めた選択を、自分たちで“正解”にしていくことが必要だと思います」