一般の生徒と音楽を志す生徒が同じクラスで学ぶ国立音楽大学附属中学校。高校でも普通科と音楽科を設置しているが、音楽大学附属で両方の課程を設置している高校は東京では唯一だ。音楽を真摯に追究する生徒がいて、日常的に音楽が校内にあふれている環境は、どちらの生徒にも好影響を及ぼすという。その魅力について伺った。

音楽コースと文理コースの生徒が一緒に学ぶ

 音楽大学附属というと、通常は音楽を目指す生徒が通う学校というイメージがある。しかし、国立音楽大学附属高等学校の場合、音楽科の定員は全体の約55%、普通科の定員は約45%と、ほぼ半々の割合だ。滝澤秀副校長は、「本校の強みは、まさにそこにあります。生徒の将来を考え、音楽だけを学んできた、勉強だけをしてきたというのではなく、音楽に囲まれた環境のなかで知性と感性の両方を育むことで、バランスのとれた良識ある人材を育てていきたいと考えているからです」と語る。

 高校と同じく、中学校でも音楽コースと文理コースを設定している。生徒数は音楽コース約55名、文理コース約15名と音楽を志向する生徒が多いのは事実だが、比率を調整していないにも関わらず、なぜか毎年ほぼこの割合に落ち着いている。多様な進路に対応するため、各コースはさらに2つのプログラムに分かれている。音楽コースは、幼い頃から音楽を習ってきた生徒が進む音楽実技プログラムと、これから本格的に音楽をはじめようと思っている生徒のための音楽準備プログラムがある。また文理コースは、入試成績によって総合プログラムと特別選抜プログラムに分かれている。「音楽大学附属ということで、音楽コースは非常にレベルが高いと思われているようですが、声楽などは中学校から始める子もいますし、小学校でブランスバンドを経験した子が入ってくるなど、多彩な生徒を受け入れています」と五十嵐稔音楽副主任は説明する。

 ただし、コースやプログラムは固定的なものではない。一定の条件はあるものの、音楽コースから文理コースへの変更や、プログラムの変更、さらに音楽コースにおける主楽器の変更さえできるようになっている。大友太郎校長は「音楽をやろうと思っていなかった生徒が、クラリネットを始めてみたが、やがてピアノに変え、打楽器にも興味が湧いて…ということはあり得ます。教えてくれる先生が豊富に揃っていますから。その後、やはり音楽より勉強に打ち込みたいという生徒だっています。成長期にある子どもたちですから、能力や志向が次々に変化していくのは当たり前なのです」と話す。成長に合わせて柔軟に進路変化ができるシステムが用意されているのは大きな魅力の1つといえるだろう。

文理コース1~3年生合同「コラボレーション授業」

学習コーチングで学力を伸ばす

 文理コース特選プログラムの生徒は、英国数がレベルの高い別授業になる。また、特選プログラムには「学習コーチング」の時間が組み込まれている。勉強のやり方を指導するプラスティー教育研究所の協力を得て、専門の講師が次週の勉強の目標設定や今週勉強したことの振り返りなどを行い、勉強のやり方をブラッシュアップしながら学習の習慣化を促している。この指導は、高校普通科の特進コースに進めば6年間続いていくことになる。

合唱コンクール

 こうした学力を伸ばす仕組みは音楽コースの生徒も利用できる。「実は、音楽をやる生徒には勉強のできる生徒が多いのです。1つのことに集中し、しかもそれを継続的に続ける習慣が確立されているためか、中学入試の成績上位層には音楽コースの生徒がかなり入っており、そういう生徒にも門戸を開いています」と滝澤副校長は話す。高校も同様だという。音楽科の生徒で音楽大学への進学を考えている生徒は大手予備校の模試を受験しない。そのため数字には表れることはないが、実際にはかなり高い偏差値を示す生徒が少なくないそうだ。まさに文武両道ならぬ「文音両道」への道が開かれているといえよう。

 音楽に関しては、週1時間は両コースの生徒が一緒に学ぶが、音楽コースの生徒はこれとは別に週2~3時間音楽の授業(レッスン・ソルフェージュ・創作)があり、技術や表現力を養っている。とくに「創作」の時間は、中1から作曲する練習を続け、中3では合唱曲を1人1曲作詞作曲することになっている。一方、文理コースの生徒は、音楽コースがレッスン等をしている時間を利用してアクティブラーニングを行っている。調べ学習やプレゼンテーションなどを組み込むことで表現する場を与え、両コースのバランスをとっている。

卒業演奏会

音楽の力によって教育効果を高める

 音楽はすべての生徒に良い影響を及ぼしている。音楽コースの生徒は、年に2回実技試験を受ける。半年間、休まずにずっとレッスンや練習を積み重ねていくことで、主体性をはじめ生徒の様々な力を伸ばしている。人前で演奏することで、表現力も身につく。まさに“音楽で”生徒を育てているわけだ。

 文理コースの生徒への教育効果も高い。同じクラスに実技試験が上手くいって喜んでいる生徒もいれば、悔しくて泣いている生徒もいる。それを目の当たりにすることで、継続することの難しさ、良さを学ぶことになるからだ。「高校になれば、実技試験には男女共に正装で臨むことになります。普段とは異なる引き締まった表情の彼らが同じ校内にいることで、普通科の生徒も多くの刺激を受けているようです」(五十嵐副主任)

 音楽は、協調性も育てる。音楽コースの生徒は、中1・2で弦楽合奏のアンサンブルを行い、中3からは高校のオーケストラに所属して、みんなで協力してものごとを作り上げていくことを学ぶ。2017年度からはランチタイムを利用して、生徒ホールでアンサンブル演奏を発表する試みも始めている。文理コースの生徒も、音楽コースの生徒と一緒に合唱に参加することで、みんなで協力してきれいなハーモニーを創造することを学ぶ。「音楽が好きでなければ、そもそも本校を選ばないはずですから、その大好きな音楽が校内に満ちた環境が、情操面も含めた大きな教育効果につながっているのだと思います」(滝澤副校長)

ランチコンサート

あらゆる進路に個別指導で対応

 中学を卒業した生徒のほとんどは附属高校に進学する。音楽科と普通科(総合進学コース、特別進学コース)があり、音楽コースの生徒の8~9割は音楽科に進むが、普通科に進む生徒も1割ほどいる。レッスンを通して集中力や継続力を身につけてきた生徒だけに、普通科に進学しても成績は高い伸びを示すという。

 高校普通科の15~20%は、国立音楽大学に進学する。音楽に親しむ環境で育ったためか、音楽教育や幼児教育、コンピュータ音楽などを学ぶケースが多い。残りの生徒の進学先は多岐にわたる。「音大以外の進路を志望する総合進学コースの生徒は毎年40名ほどですが、本校には、指定校推薦枠が中央大、成城大、成蹊大などを含め80大学300学科ほどありますから、かなりのニーズに応えることができます。しかも、主体的に活動し、表現力が豊かな生徒が多いことから、AO入試や推薦入試でも力を発揮しています」(滝澤副校長)

 難関大学を目指す特別進学コースの生徒に対しては、「学習コーチング」で志望校別の学習指導を行うことになり、完全な個人指導体制になる。音楽コースや高校音楽科の生徒は最初から個人指導だったわけで、それを高校普通科の生徒にも適用した形だ。少人数だからこそ可能な個別指導が、多彩な進路実現を可能にしているのだろう。

滝澤 副校長 大友 校長 五十嵐 音楽副主任先生

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