創立約150年を迎える立正大学付属立正中学校・高等学校には、仏教の教えを元にした建学の精神が脈々と受け継がれている。豊かな心、たくましい精神を育てながら、特色のある教育プログラムで、21世紀にふさわしい確かな学力を育成している。

予測不能の時代を生き抜くバイタリティーある人間

校長 大場一人先生
校長 大場一人先生

 立正大学付属立正中学校・高等学校は、1872年(明治5年)に開校した歴史のある学校だ。日蓮宗の僧侶を育てる学校として設立され、1925年(大正14年)には一般の子弟に開放した。大場一人校長は、建学の精神を次のように話す。「本校は仏教主義の学校ですが、生徒に信仰を強要するわけではありません。『正しいことを立てる』という校名が建学の精神そのもので、日蓮聖人の説いた仏教の教えを土台に、21世紀にふさわしい人間教育を行っています」

身延山久遠寺でのオリエンテーション
身延山久遠寺でのオリエンテーション

 大場校長はこれからの時代に必要な要素として、困難なことがあってもへこたれないバイタリティー、周囲への感謝の気持ち、生かされているという謙虚な気持ちを持つことをあげる。そんな精神を造る場が、校内外で実践される宗教の学びだ。週に1時間の道徳の時間は、宗教について学ぶ。中学1年と高校1年生は日蓮聖人が修行した身延山久遠寺(山梨県)で、1泊2日のオリエンテーションを行う。寺の宿坊に泊まり、早朝に勤行に参加するのだ。「貫首様から、世のために生きること、一生懸命生きる大切さをお話しいただきます。荘重な雰囲気のなか、生徒は真剣に耳を傾けています」

 心の教育の成果は、同校の皆勤賞の多さにも表れている。6年間無遅刻無欠席の生徒が1割弱、3年間が3割、1年間だと6割に達する。スケジュール管理に一役買っているのが、入学直後に渡される学校オリジナルのスケジュール手帳。学習時間を記録することで学習習慣を身に付ける。毎日を振り返りながら、次の予定を考えることで自己管理能力を養うのだ。

学校オリジナルのスケジュール手帳
学校オリジナルのスケジュール手帳

明るく伸びやかな新校舎 可能性を秘めたIT授業

 2013年に新設した校舎はガラスを多用しており、採光が豊かで校内が明るく伸びやかに感じられる。教室やラウンジ、ランチルームの壁にもガラスを使っており、ほかの学年やクラスとも、緩やかに繋がっているような印象だ。廊下は通常よりも幅が広く、要所に椅子とテーブルが配置されて、自由にくつろぐことができる。あちらこちらで、生徒同士や先生と談笑する姿が見受けられた。

 文武両道を掲げている同校は、体育施設も充実。一年中利用できる公認プール仕様の屋内温水プール、剣道部と柔道部が同時に練習できる300畳の武道場、さらにパッティング練習用のグリーンが併設されたゴルフ練習場や弓道場など、都内では珍しい設備もそろっている。

 新校舎と共に整備されたのが、IT環境だ。全教室にプロジェクター付き電子黒板と無線LANが配備され、タブレットなどのICT機器を授業に取り入れている。教科書やプリント、デジタル化した資料をスクリーンに映し、要点を拡大して説明するなど、よりわかりやすい授業を実践している。大場校長は「3年程前から教員が集まり、ICTを使って学習に興味を持たせる効果的な方法などの研修を行っています。教科によってやり方は異なりますが、教員がいろいろと工夫して導入しています」とその成果に手応えを感じている。

読解力、プレゼン力を鍛える学校独自のR-プログラム

ホームルームの時間を利用したR-プログラム
ホームルームの時間を利用したR-プログラム

 同校の特色ある教育プログラムが、Research(調べる)、Read(読み取る)、Report(表現する)の3つのスキルを伸ばすR-プログラムだ。導入の理由を大場校長は次のように話す。「読解力、表現力は学びの基本。国語だけでなく、どの教科にも土台となる必要な力です。大学入試センター試験に変わる共通テストでも記述が導入されており、本校のめざす教育が入試改革とマッチしてきたと感じています」

 プログラムの対象となるのが中1生から高1生で、朝のショートホームルームやロングホームルームの時間を利用する。生徒は新聞や雑誌の記事を読んで自分の意見をまとめ、数人が交代でクラスみんなの前で発表する。題材はコラムのほかにグラフを読み解いたり、サイエンス系のテーマを扱うこともある。その集大成として、学内で弁論大会やディベート大会を開催。この取り組みを積み重ねることで記述力やプレゼン力が身につき、仏教主義学校の弁論大会で1位、2位を取得するなど成果が現れている。

 同プログラムは読書活動とリンクしており、読んだ本の内容を記す『読書ノート』や、クラス対抗で読書量を競う『リーディングマラソン』を開催し、本への関心を高めている。最近では通学時間を利用し、電車内でページをめくる生徒も増えてきた。

 ところで教科のなかで、いちばん授業時間が多いのが英語だ。週6時間の通常の授業のほかに、ネイティブ講師による英会話の時間が2時間設けられている。この授業は1クラスを3分割し、発話の機会を増やしている。放課後は英検対策講座を開講。共通試験の外部テストを睨んで、英検2級や準1級を取得した生徒には、TOEFLやTOEIC、ミッション系の大学をめざす生徒にはTEAP などの指導も行っている。中3は全員が英語で3分間スピーチを行い、その様子を文化祭で放映している。海外語学研修も30年以上前から実施しており、中3から高2の希望者が夏休みを利用して、アメリカやイギリスへ出かけている。

生徒と直に触れ合う、校長室での懇親会

キャリア教育の一環として、企業や学校、病院などで行う3日間の「職場体験」
キャリア教育の一環として、企業や学校、病院などで行う3日間の「職場体験」

 低学年からキャリア教育を取り入れているのも、同校の特徴だ。中学1年次には『職業講話』として、社会で活躍する卒業生の話に耳を傾ける。中学2、3年次には企業や学校、病院などで3日間職場体験を行う。その体験を壁新聞にまとめ、文化祭で発表。生徒を受け入れた企業の担当者も、見学に訪れるという。「自分が経験することで、働くことがいかに大変かを自覚し、両親に感謝の気持ちを持つようです。また自分がなりたい職業に就くには、高校を卒業してからどの大学、学部や学科に進めばいいのか、具体的に考えるきっかけになっています」と大場校長は語る。

 敷居が高く感じられる校長室だが、昼休みと放課後には、校長室から賑やかな生徒の声が聞こえてくる。大場校長が中3生は1対1で、中1生は6人ほどのグループで面談を行っているからだ。「悩み事やクラブ活動、勉強のことなどを聞きます。最近ではイジメによる子どもの自殺が報じられていますが、決してあってはならないこと。一人ひとりの生徒を複数の教員が見守ることで、生徒を大切に育てていきたい。でも何より私にとって、生徒と話をする時間がいちばん楽しいのです」(大場校長)

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